意味のある数字、意味のない数字

経営において数字は切り離せないものです。
定性的な目標を定量化することで、進捗も明確になり、達成の確度も向上します。
しかし、数字だけでは正確なことがわからないといったこともあります。

今回は身近な例をいくつか挙げて、数字について考えてみたいと思います。

身長

身長180cmは高いでしょうか?低いでしょうか?それとも標準的でしょうか?

「高い」「高い方」と感じる方が多いかもしれませんが、それはおそらく「日本人の身長として見たら」のような、何らかの条件や基準を設定して、それらと比較して判断しているかと思われます。

数字は絶対的なものであったとしても、基準によって評価は変わります。
さきほどの180cmも日本人の身長として考えると高い方かもしれませんが、NBA所属の選手の身長として見ると180cmでは小柄でしょう。

このように、数字それだけでは何も論じることができず、比較の対象や何らかの条件が必要な場合があります。

売上高における粗利益率や営業利益率といった数字をチェックすること自体は重要かもしれませんが、数字だけを見ても何も得られるものがないこともありえます。
数字の種類によっては、昨年度の数字と比較するといったことが求められます。

糖質オフ・糖質ゼロ

通常のものより糖質が少ないもの、ゼロに近い食品や飲料食品が販売されています。
カロリーを気にされている方は、こういったものを選択されているかもしれません。

さて、体を動かすエネルギーとなるタンパク質、脂質、炭水化物(糖質)の3つを三大栄養素と呼びます。
三大栄養素の摂取比率をPFCバランスといい、厚生労働省は生活習慣病の発症予防、重症化予防のためには以下の割合が良いとしています。

タンパク質:13~20%
脂質:20~30%
炭水化物:50~65%

さて、一般的な食品・飲料食品はどれだけ糖質が含まれていて、糖質オフ・糖質ゼロのものに置き換えた時、どれだけの効果があるでしょうか。

例えば、350ml缶におけるビールの糖質は10.9gです。
茶碗一杯のご飯(150g)の糖質量が55.2gですから、ご飯を茶碗1/5杯ということになります。
摂取する糖質を減らすという点において、糖質オフ・糖質ゼロのビールは効果的だと感じるでしょうか、あまり意味がないと感じるでしょうか。

数字を見るときは、全体の中でどれだけインパクトを与えるかという点を考える必要があります。

経営において業務や作業の効率化は重要ですが、目を三角にして必死で作業時間の短縮をしても、それが全体のなかで影響が小さいのであれば優先順位は高くなりません。

コロナウイルスの感染者数

2020年初頭から連日ニュースで「本日の感染者数は……」という報道がなされていますが、日ごとや都道府県単位での比較はできません。
理由は分母が分からないからです。

100人の感染者が出たとしても、100,000人を検査しての100人なのか、1,000人を検査しての100人なのかでは全く割合が違います。
したがって、分子の数字だけを見て何かを論じることはできません。
適切な数字を基準にしないと、役に立つ情報を得られない例だと言えます。

また、コロナ対策に関しては感染者数だけではデータとして物事を判断するには乱暴すぎます。
年齢や性別、基礎疾患の有無、生活習慣といったような感染者の属性、属性ごとの重症者数といったことが分からないと、具体的な対策も取りづらくなります。
ありたい姿(ゴール)はコロナ感染者がほぼいない、無視できる程度だと設定できたとしても、現状が良く分からない訳ですからギャップが明確になりません。
必然的に、対策も最大公約数的なものになってしまいます。

数字自体は嘘をつかないかもしれません、数字だけでは何もわからず、数字以外の情報が求められるケースも多々あります。

最後に

定量化することで、目標を達成する確度が向上します。
また、数字で語ることで、説得力も向上します。

しかし、一見説得力がありそうに思えるものの、実際はあまり意味がない、何も言っていないケースも多々あります。
今後は数字の見方、使い方にご留意頂ければと思います。

参考になれば幸いです。

経営に関するご相談、お問い合わせなど、お気軽にご連絡ください。

CONTACT