経営学を考える(PEST分析)

経営における各種のフレームワークは、経営者にとってのツールといえるでしょう。
その道具を効率的に活用するためには、その特徴を把握する必要があります。
今回はPEST分析について、考えていきたいと思います。

PEST分析とは

PEST(ペスト)分析とはマクロ環境分析の代表的なフレームワークです。
政治面(Politics)、経済面(Economy)、社会面(Society)、技術面(Technology)の分析を行います。
これら4つの頭文字を取ってPEST分析と呼ばれています。

法律の施行や規制緩和、経済動向、人口動態や生活スタイルの変化、テクノロジーの進化など、環境は常に変化しています。
マクロ環境の変化は、自社やクライアント企業を取り巻くミクロ環境に影響を与えます。
そのために、今後の展望を考えるにあたってマクロ環境を分析する必要があります。

AIによって士業の仕事が奪われるということを聞いたことがあるのではないでしょうか。
まさに技術の発展による市場への影響の例といえます。

今後の戦略を考えるにあたって、マクロ環境はどうなっているのか、今後どのように変化があると考えられるのかを考える必要があります。
また、それらがミクロ環境(自社やクライアントを取り巻く環境)にどのように影響を与えるのかも併せて自社の行く先を考えます。

政治面(Politics)

政治動向、制度、法改正などは、市場のルールや需要に大きな影響を与える可能性があります。

かつての小泉首相時代の規制緩和において、運送業界は免許制から許可制に変更になりました。
その結果、新規参入が増えて競争環境が激しくなったというような事例があります。

その他、政府が外国人観光客の呼び込みに力を入れたことで、外国人観光客が飛躍的に増えているのはどなたも実感されているのではないでしょうか。
ホテルに宿泊する観光客が増えればホテルそのものも増えますし、ホテルのリネン類、食材の納入業者の需要も増加します。

経済面(Economy)

景気動向、為替、株価、経済成長、消費動向などは、市場の成長性や需要に大きな影響を与える可能性があります。

経済動向の影響といえば、人材の確保に対する影響がイメージしやすいでしょうか。
景気が良くなると人材採用をしたい企業が増えるため、人材市場は売り手市場なることで採用コストも増加します。
逆に、景気が悪くなると企業は採用を控えるため、人材市場は買い手市場なって採用コストが低下します。

その他にも、経済面での変化は実に様々な面に影響を与えます。
例えば、国内外の景気動向や経済動向は企業の広告宣伝費にも影響を与えます。
景気が悪くなる、広告宣伝費が削減されがちですので、広告そのものが減ったり、同じ内容でも値下げ交渉をしてくるようになったりといったことが考えられます。
そうなると、広告関連の事業者の売上に影響が現れることになります。

社会面(Society)

人口動態、年齢分布、流行など、社会的価値観やライフスタイルの変化は、市場の成長性や需要に大きな影響を与える可能性があります。

日本は少子高齢化が進んでいますが、子供向けの商品・サービスのパイが縮小しているということが言えそうです。しかし、子供1人当たりにかける金額の拡大というプラスの要因も考えられます。逆に高齢者をターゲットとした市場は拡大していくでしょう。

また、少子高齢化が進むということは、労働力の確保が難しくなっていくということです。
そのため、将来的には労働力が減少することから逃れることはできません。
どれだけAIやRPAが進歩しても、全ての業種の全ての業務をカバーすることはできませんので、何らかの対策を検討する必要があります。

技術面(Technology)

技術の進歩や新しいテクノロジーなどの技術動向の変化は、企業の経営資源や競争環境、市場のニーズに大きな影響を与える可能性があります。

デジタルカメラの登場によって、フィルムカメラとフィルム、現像の需要がほとんどなくなってしまいました。
しかし、スマートフォンに対等によってコンパクトデジタルカメラ市場が侵食されています。
2010年ごろをピークに下落傾向が続き、2019年には2010年の8分の1ほどになってしまいました。

このように、技術の進化は既存の商品・サービスを無価値なものにするほどの影響を与えることもありえます。

未来も考える

PEST分析を行うのであれば、現在の分析だけでは中途半端です。
3~5年程度の近い将来がどうなっているかも検討する必要があるでしょう。

もちろん、先のことは誰にも分かりません。
しかし、人口の減少と少子高齢化、インバウンド関連の市場の成長、諸外国の技術力の向上、IT技術の発展などは分かっていることです。
今後のマクロ環境の変化が、市場に対してどういった変化を与えるのか、定量的に分析することはできないにしても、どういった影響があると見込まれるかは考えることができるはずです。

例えば、5年後には誰もが現在より5歳年を取っています。
現在65歳の従業員にパートタイムで引き続き就労していただいていたとしても、70歳になったら辞めてしまうかもしれません。
少子高齢化によって若い人が減っている訳ですから、人員の確保ができるでしょうか?

現状だけを鑑みて、3年後や5年後のビジョンを設定したとします。
ビジョンを達成したとしても、それが時流に合ったものでなければ頑張った価値がありません。

環境分析の際には、今後どうなっていくのかも併せて分析してください。

※宜しければ、コラム記事「5年後を見据える」も併せてお読みください。