
「なぜ自社は変われないのか」そう考える経営者様も多いのではないでしょうか。
実はその背景には、人間の心理に根ざした見えない抵抗が存在します。
今回は、見えない抵抗となりうる代表的な心理学的現象をご紹介します。
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認知的不協和
認知的不協和とは、「自分が信じていること」と「自分の行動」や「別の考え」とが矛盾するときに、人が感じる不快な心理状態のことです。
例えば、「酒を飲みたい」という欲求と、「飲み過ぎは体に悪い」という知識はどなたもお持ちでしょう。
この2つが同時に存在するとき、人は不協和を感じ、「ストレス緩和」「人間関係の円滑化」に必要だといった感じで、どちらかを都合よく解釈し直してしまいます。
この行動を、アメリカの心理学者レオン・フェスティンガーは「認知的不協和理論」として提唱しました。
これは経営にも表れます。 たとえば、このままではいけないと危機感を持っているにもかかわらず、実際には何も変えないのは、今までの自分の判断や経営が間違っていたと認めることの不快感を避けるためかもしれません。
集団極化
集団極化とは、集団で話し合うことで、個人で判断するよりも意見が極端な方向に傾きやすくなる現象のことです。
フランスの社会心理学者のモスコヴィッシらによって提唱されました。
たとえば、赤字の事業に対して「やめるべきではない」と、やや否定的な意見を持つ人が多いグループでは、話し合いの中でお互いに否定的な意見を出し合うことで、否定的な見方がさらに強化されます。
その結果、「絶対にやめるべきではない」という極端な結論に傾いてしまうことがあります。
企業の中でも、「やる」と決めた施策に対して「やめるべきだ」と言いにくい空気が生まれると、中庸の視点や慎重な検討が排除され、思い込みと勢いだけで意思決定がなされてしまうことがあります。
心理的拘泥現象
心理的拘泥とは、アメリカの心理学者バリー・ストーらの研究に代表される考え方で、過去にかけた労力や費用を無駄にしたくないという思いから、誤った判断を引き返せなくなる心理状態を指します。
たとえば、全額で1億円の投資が必要なプロジェクトがあり、すでに6千万円を投入していたとします。
しかし、半年たっても成果が見えず、ここでやめるという選択肢があっても、「今やめたら6千万円が無駄になる」「ここまで来たのだから」と判断を正当化し、さらに投資を続けてしまうというものです。
しかも、それが社長の肝いり案件だったら中止することは、社長の判断ミスを認めることにもなりかねません。
結果として、損失を拡大させるという非合理な決断をしてしまうことになります。
一貫性の法則
人は一度選んだ方針や行動を維持し続けようとする性質があります。
これを「一貫性の法則」と呼びます。 アメリカの社会心理学者であるロバート・B・チャルディーニが自著の中で紹介している法則です。
「一度始めたからにはやり遂げなければ」「前にもそう言ったから今さら変えられない」といったことは個人でもよくある話ですが、企業ではさらに強く働きます。
たとえば、既存の事業や慣習、古くからの取引先やルールなど、変えるべきとわかっていても、「過去の判断との整合性をとりたい」という一貫性の欲求が、心理的ブレーキになります。 これは、前述の心理的拘泥現象を助長する要因にもなります。
グループ・シンク(集団浅慮)
グループ・シンク(集団浅慮)とは、アメリカの社会心理学者のジャニスによって提唱された概念で、集団で合意形成を行う際に、かえって非合理な判断に陥ってしまう心理現象を指します。
たとえば、政党の主張の中には、外部から見て明らかに支持を失い、選挙時の票を減らすようなものが散見されます。
これは、グループ・シンクによる影響が強く表れている例だといえるでしょう。
「みんなで決めたんだから大丈夫だろう」「反対意見は空気を悪くするだけ」といった同調圧力が強まると、危機的状況を正しく認識できなくなります。
結果として、業績が落ちていても「うちに限ってそんなことはない」と根拠のない楽観主義に陥ったり、異論を封じ込めたりすることで、組織全体の判断力が鈍っていきます。
特に同質性が高い組織では、グループ・シンクに陥るリスクが高く、注意が必要です。
最後に
中小企業に限らず、組織が変われない原因には、スキルやリソースの問題だけでなく、「変化に対する心理的な抵抗」が深く関わっています。
裏を返せば、こうした心理メカニズムを理解し、自覚することで、変革への一歩を踏み出すことは可能なはずです。
会社が変わるためには、ルールや手段を検討することよりも先に、心理的な壁をどのようにして超えるかを検討する必要があるのではないでしょうか。
以上、参考になれば幸いです。