ヒット商品ではなく仕組みで儲ける

ヒット商品を出さないと収益を上げられない、そんな風に考えていませんか。
それは非常に危険な考え方です。

いずれの企業もヒット商品を出し続けることは現実的でなく、次々ヒット商品を出さないといけない経営というのは、そもそも収益の上がる構造になっていません。

これは、商品を開発するメーカーだけでなく、卸売業や小売業にとっても同様です。
メーカーがヒット商品を作ってくれないと収益が上がらないのであれば、儲かるビジネスとはいえないでしょう。

ヒット商品<ビジネスモデル

「ビジネスモデル」という言葉に学術的な定義はありませんが、誰に何をどのように販売し、どのように代金を受け取るかといった、事業に関する一連の仕組みと言えるでしょう。

利益の出る仕組みができていれば、ヒット商品が出なくても利益が出ます。
その上で、ヒット商品が出たらその分だけ利益が増えます。

それに対して、利益の出る仕組みができていないと、ヒット商品頼みになります。

ヒット商品が出ないと利益が出ないので、次のヒット商品を生み出すための開発費の捻出が難しくなり、ますますヒット商品を出しづらくなるといった負のスパイラルに陥ります。

つまり、ヒット商品ではなく、ビジネスモデルで利益が出る企業は、より持続できる企業だといえます。

ドラクエ12は儲かるか

ゲームメーカーであるスクウェア・エニックスを例に考えてみましょう。

現在、人気シリーズであるドラゴンクエスト12を開発中とのことで、発売時期は正式に発表されていません。
前作のドラゴンクエスト11が2017年販売ですので、開発期間は相当なものだということが分かります。

人気ゲームですので、リリースされるとキャッシュインも相当な額が見込まれますが、現在においては、キャッシュインはゼロ、キャッシュアウトだけがどんどんかさんでいるという状況です。

開発期間が長くなるほどキャッシュアウトが増え、その分損益分岐点はどんどん上がっていきます。

たくさん売らないといけないとなると、プロモーション費用も必要ですし、ヒットさせて開発費用を回収できなければ、作らない方がマシだったということにもなります。

また、単純にコストを回収すれば良いということではありません。

ドラゴンクエスト12の開発にヒトやカネといった経営資源を投入している訳ですから、次のヒット作のために、十分な経営資源を投入しづらくなります。

ヒット作を次々出さなければいけないのに、ヒット作を出すために、次のヒット作の準備が十分にできないという矛盾とリスクを抱えることになります。

つまり、ヒット作のための大型開発は、開発費を回収できなければ経営圧迫の原因になります。

ヒットしなければ赤字になり、ヒットしても次の開発資金に事欠く、こういった構造的な弱点をはらんでいます。

任天堂のケース

スクエア・エニックスに対して任天堂は全く異なる戦略を取っています。

ご存じの通り、ポケットモンスターはゲームに始まり、様々なメディア展開をしています。 そのため、ゲーム以外の収益を任天堂にもたらしています。

ゲームメーカーのように、キャッシュアウトが先行するビジネスモデル上のボトルネックを、ライセンス料やグッズ収入といった別のもので補填することで、安定した経営基盤を築いているといえるでしょう。

つまり、ヒット作だけに頼るのではなく、収益のチャネルを分散することで、安定性と開発費用の捻出の両方を高い次元で実現しています。

最後に

ヒットが出れば収益が上がるが、出なければ苦しいというのはギャンブルと変わりません。

しかも、市場には自社と買い手だけでなく、競合だって存在している訳ですから、後出しで模倣されて、せっかくの市場を奪われることだってありえます。

ヒット作自体は良いことですが、ヒット作を出さないといけないのは良い状態とは言えません。
ヒット作が出なくても利益が出る仕組み、これが持続可能性を高められる経営です。

以上、参考になれば幸いです。

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