
経営とは問題解決の連続と言えます。
ここでいう問題とはトラブルや起こって欲しくない事象のことではなく、現状とありたい姿とのギャップのことを指します。
自社が抱える問題に対して、解決のためのやり方を知りたい、成功事例を知りたいと思われる方が多いtと思われますが、解決の方法を知ればそれだけで良いのでしょうか。
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正解を探すことの不合理さ
「やり方を知りたい」というのは、やり方さえ知れば問題は解決できると考えているということでしょう。
言い換えると、「どのような問題に対しても、自分自身が成長する必要はない」という考えが根底にあるのではないでしょうか。
例えば、トレーニングジムにある各種トレーニングマシンは、全くコツが不要だとは言いませんが、バーベルやダンベルよりも使い方が簡単です。
押すだけ、引くだけといった動作で筋肉を鍛えることができます。
しかし、当然ながら自分の筋力に応じたウェイトしか取り扱うことはできません。
やり方を知っていても、十分な能力がなければ実行することはできないということです。
なぜやり方を最初に知りたがる・考えるのか
多くの人は、小学生の頃から社会に出るまで、ずっと自分の能力に見合ったタスクを与えられてきました。
小学1年生は小学1年生の勉強、2年生は2年生の勉強、中学1年生は中学1年生の勉強といった具合にです。
また、社会に出たら、新入社員は新入社員にできるタスク、キャリアを積むとキャリアに応じたタスクが与えられます。
そのため、自分の能力で実行できるタスク、解決できる問題が当たり前だとすり込まれているため、やり方さえ教えてもらって、慣れたらできるという感覚になっているのではないでしょうか。
ですが、経営は違います。
経営には正解がありません。
また、誰も自分のためにちょうどいい課題を用意してはくれません。
やり方を聞いて済ませることができるものではないということです。
だからこそ、自社にあった解決方法を自分で考え、実行できるようになるための能力の向上が求められます。
そのために、能力の向上が必要であり、そのための「学び」が必要です。
学びとは
「学び」というと、机に座って教科書を開いて……といったイメージを持たれる方も多いかもしれません。
学校を卒業した時点で、そうした学びはもう終わりだと考えている方が多いのではないでしょうか。
机に座って行うことだけが「学び」ではありません。
スキルや知識を含めた自分の能力を高めようという行為が全て「学び」といえるでしょう。
いずれにしても、今の能力で解決できない問題は、自分(従業員)の能力を向上させるか、他者の力を借りるしか解決できません。
それらのどちらが良いかは、より合理的な方法を選択すれば良いでしょう。
では、どのような能力が必要かという点については、職位ごとのざっくりとした考え方をこちらの記事にまとめています。
中小企業における「学び」の実態
2025年中小企業白書によると、リスキリングに取り組んでいる経営者様は全体の3分の1程度とのことです。
参考:2025年版中小企業白書
また、日本政策金融公庫が中小製造業に勤務する従業員に対するアンケートを取っています。 それによると、最近5年間にリスキリングに取り組んだと回答した人は全体の1割以下という結果です。
参考:日本政策金融公庫総合研究所「アンケートと事例にみる中小製造業のリスキリングの実態」
あくまでもリスキリングであり業務のための能力の向上とは違いますし、数字をどう解釈すべきかという点に留意すべきですが、多いと思うでしょうか、少ないと思うでしょうか、それともこんなものだと思うでしょうか。
ただ、確実に言えることは、自分の能力以上のことはできないので、「能力が上がる=できることが増える」ということです。
つまり、「やり方を知っていても実行できない」状態から、能力が高まることで「やり方を聞くだけで実行し成果を出せる」可能性が高まる、ということです。
さらに、やり方を聞かないといけない状態から、自分で考えられるようになる確率も向上します。
たとえばサッカーでトリッキーなプレイで相手を抜く、思いもよらないところからゴールを決めるといったことがあります。
なぜそんなことがとっさに考えつくのでしょうか。
それは、実行できる能力があるからです。
人間は、自分ができないことは考えつきません。
「学び」の阻害要因
日々のルーチンをこなすことは大事ですが、改善をしようという意思がなければ、人は学びません。
人の脳は考えない、楽をしようという機能があり、また心理面では、変化したいという意思より現状を維持したいという意思の方が強く働きます。
改善する必要があるのか、日々ちゃんと回っていると思われる方もいらっしゃるかもしれません。
それは、現状が変わらないことを前提としていないでしょうか。
日本の人口は減っているので国内市場は縮小していますし、労働力の確保もだんだん難しくなっています。
これだけでも5年後、10年後に現状の経営体制を維持できないことが見込まれます。
その時になって、やり方を聞いただけで対応ができるでしょうか。
最後に
企業を取り巻く環境は常に変化しています。
自社にとって都合の良い、都合の悪い変化の両方があると考えられますが、いずれにしても企業の維持・発展のためには変化に適応していく必要があります。
経営者様自身や従業員の方々が必要な能力を向上させ、環境変化を機会に変えていくことが求められるのではないでしょうか。
「学び」といっても大げさに捉える必要はありません。
スマホでゲームをしている時間、SNSを眺めている時間のうち、10分~15分でも本を読むことはできるはずです。
以上、参考になれば幸いです。