デザインの持つ効果

「製品のデザイン」と聞くと、どうしても消費者向け商品の見た目を良くするものというというイメージで、事業者向けの商品には関係がないとお考えの方も多いのではないでしょうか。
結論から申し上げますと、デザインとは見た目を良くするだけのものではありません。

では、デザインにはどのような効果があるのでしょうか、今回はそれをご紹介いたします。

なお、「デザイン」という単語には複数の意味がありますが、本記事では意匠という意味で使用しています。
さらに、意匠を「形状」「色彩」「模様」の3つに分けてそれぞれ考えていきたいと思います。

形状による効果

商品の性能・機能に影響を与える

新幹線の形状を思い出してみてください。
流線形になっていますね。

なぜ流線形になっているのかというと、空気の抵抗を減らすためです。

逆に、新幹線以外の車両は新幹線ほどのスピードを出しません。
したがって、進行方向に対して垂直にして、顧客が乗車できるスペースを確保しています。

スピードを上げるために空気の抵抗を減らすには流線形にする。
それに対して、乗車できる人数を増やしたいのであれば箱型にしてスペースを増やす。

このように、形状が性能や機能に対して影響を与えます。

QCDの改善

形状によるメリットを得られるのは商品の使用者側だけではありません。
生産者側もメリットを享受することができます。

形状の工夫によってパーツ数を減らすことも可能です。
パーツ数が減ると、使用する金型が減ります。
さらに、加工の工数や手間も減ります。
また、パーツ数を減らすことで、加工や組み立ての手順や手間が削減できます。

熟練した職人が作業しなくてはいけないものであったとしても、形状の工夫によってマシニングセンタで完結してしまうといったように、形状によって商品の作りやすさに影響します。

また、形状によって、組み立てやすさも変わります。

それらの結果、製造原価の削減や生産リードタイムの短縮に繋がります。
さらに、形状によっては歩留まりも向上するでしょう。
それらによって原価の削減にもつながります。

模様による効果

訴求力を高める

形状は同じであったとしても、模様を施すことで、あるいは模様が変わることで買い手に対する訴求力が変わり、売上に影響を与えます。

例えば、白い無地のTシャツに人気のキャラクターをプリントするだけで数倍の値段で購入する買い手が出てきます。
機能的には何も変わりませんが、模様によって訴求力が高まったと言えるでしょう。

また、写真、イラスト、文字も模様の一種として捉えることができます。
これらは、形や色彩よりも、見た人に対してメッセージをダイレクトに伝えやすいという特長を持ちます。

例えば、料理の本であれば、本の中で紹介されている料理の写真を表紙に使用するはずです。
当然の話ですが、風景や動物の写真を表紙に使用するよりも、どういった情報を提供している本なのかがはっきりと伝わるからです。

和食の本なのに、味噌汁や焼き魚ではなく、富士山やゾウの写真の表紙だったら、そもそも和食の本だと認識されず、手に取ってもらうことすらされないかもしれません。

このように、模様は買い手に対する訴求力に影響を与えます。

情報を提供する

模様が施されているのは何も商品だけとは限りません。

ドラッグストアのような大型の店舗で、店舗でレジを待つ顧客を誘導するための矢印や、どこで待てば良いかを示す足型のマークをご覧になったことはあるのではないでしょうか?
これは、レジでの順番待ち時のトラブルを防ぐ役割があります。

割り込みや並ぶ順番で顧客同士がトラブルになるとしたら、店が混雑している時でしょう。
混雑している時は店員も業務で忙しい訳ですから、顧客のトラブルへの対応で余計な手間を取られたくないはずです。

また、顧客同士のトラブルが発生すると、他の無関係な顧客も嫌な思いをする可能性があります。

このように、床の矢印やマークといった模様により、顧客に対してどこでどう待てばよいという情報を提供することで、店舗側は余計な手間を取られずに済みますし、顧客側に対してもスムーズにレジを待つことができるというメリットを提供しています。

色彩による効果

心理的な影響を与える

色は視覚以外の他の五感と共感覚的な関係があり、見る人に生理的な影響や心理的な影響を与えます。

例えば、色によって時間の経過する感覚に影響を与えます。
暖色の部屋は実際の滞在時間より長く感じさせ、寒色の部屋は実際の滞在時間より短く感じさせます。

このような時間の感覚を狂わせる効果を利用して、回転率を上げるために内装に暖色を使用している飲食店も存在します。

また、青系の色は食欲を失せさせる効果がありますので、飲食店では使用しないことが多いといったことがあります。

作業のミスを減らす・効率を改善する

セルフ式のガソリンスタンドの給油ノズルは、油種ごとに色分けされていることはご存知の方も多いのではないでしょうか。

レギュラーは赤、ハイオクが黄、軽油が緑だと法律で定められています。
このおかげで「○色のノズルで給油してください」というアナウンスに従えば正しい油種の給油ができます。

もし、ノズルの色分けがされておらず、油種が文字で書かれているだけだったらどうでしょうか?
ミスが発生する可能性がありますし、文字を読まないといけないために、時間も余計にかかってしまいます。

しかも、ノズルの並び順はガソリンスタンドによってまちまちなので、普段行かないガソリンスタンドで給油した際に間違える可能性が高まることは容易に想像できるのではないでしょうか。

最後に

ご紹介したのは一例ですが、デザインには経営において様々な効果があることはお分かりいただけたのではないでしょうか。

全ての人工物には、程度の差はあるもののデザインが施されています。
デザインによって得られる様々な効果を上手く活用することで、消費者向け製品の製造業だけでなく、全ての業種でなんらかの成果や効果を得ることができます。

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