労働生産性を上げる必要性

我が国の従業員一人当たりの労働生産性は、OECD加盟国やG7諸国と比較すると低いということはよく知られた事実です。

公益財団法人日本生産性本部によると、2024年度の我が国の時間当たり労働生産性は56.8ドルでOECD加盟38カ国中29位、一人当たりの労働生産性は92,663ドルでOECD加盟38カ国中32位とのことです。

ドルベースであれば為替相場の影響を受けますし、順位そのものに意味があるものかどうかは分かりませんが、労働生産性を上げなくてはいけないということには違いありません。

労働生産性とは

労働生産性の定義はいくつかありますが、従業員1名当たりの付加価値額、1時間の労働に対する成果といった説明がされています。
総じて言えることは、単位当たりの生み出された付加価値だということであり、これが低いと会社として利益が小さいということになります。

市場に提供している商品の品質が低いために高く売れない、あるいは投入した経営資源に見合った利益を取れていないなど、いくつかのパターンが考えられますが、決して良い状態ではありません。

労働生産性が低い理由

労働生産性が低いというのは、原価に対して売価十分に確保できていない状態とも言えます。

我が国の労働生産性が低い理由をいくつか挙げます。

商品がコモディティ化している

商品・サービスがコモディティ化していて、差別化ができていない場合は、価格競争に巻き込まれ、売価を下げざるをえなくなります。

買い手にとって競合との違いがなければ、価格が選択の理由になるからです。

機能的な価値を売りにしている

機能的な価値を売りにすると、このスペックなのにこの値段、この価格帯なのでこれだけのスペックといったように、やはり価格を下げて販売せざるを得ません。

PCやPCパーツのように、特にユーザーが機能的な価値を求めている商品であれば、機能的な価値を価格に転嫁しやすいです。
そのうえで、買い手が自分のニーズに合ったものを選択します。

しかし、家庭用ゲーム機のようにスペック競争の結果、ユーザーのニーズと乖離してしまうと、スペックの高さ自体は魅力として感じにくくなります。

非効率な作業

我が国の場合は特にサービス業の労働生産性が低いと言われていますが、サービス業の労働生産性が低い理由として最も大きなものの一つとして、自動化や効率化が進んでいないということが大きな要因の一つです。

作業の結果、付加価値が向上して、その分高い価格で販売できるのであれば良いでしょう。
しかし、価格に転嫁できない作業は極力なくしてしまう、自動化する、あるいは効率化することが必要です。

コロナ禍において、リモートワークをしているにも関わらず、印鑑をもらうために会社に出社したという話がありましたが、紙ベースの書類や担当者の押印といった非効率な慣習は労働生産性を下げる要因になります。

より良いものをより安くという努力

理念としては意義がありますが、良い商品、良いサービスを提供するにはそれなりのコストがかかります。
つまり、手間を含んだ原価に対して売価が見合っていないということです。

大企業が安い価格で商品を提供できるのは、大量仕入れ、大量生産、大量販売ができるからです。
経営資源が乏しい中小企業は同じことはできません。

労働生産性を上げるために

繰り返しますが、売価に対する付加価値(粗利)の割合が労働生産性です。

したがって、労働生産性を上げるためには

  • 売価を上げる
  • コストを下げる

の2つの考え方があります。

売価を上げる

ある意味ですぐにできることが値上げです。

もちろん、買い手が購入しない価格に上げることはできませんが、必要に応じて上げること自体は悪い事ではないでしょう。

受注型の企業の場合は、原価高騰に対して発注側から単価を上げようなんて言ってくるわけがないので、自分から交渉する必要があります。

中小企業庁も価格交渉・転嫁の支援ツールを公表したり、価格交渉講習会を開催したりしています。

受注型の製造業であれば、値引き要請は避けられないかもしれません。
しかし、それに従っていても相手は感謝するどころか、要求がエスカレートするだけで、報われることはありません。

コストを下げる

現実問題として、人件費の高騰を理由に取引価格の交渉は難しいでしょう。
原材料のように、価格をコントロールしづらいものではなく、人件費は作業効率化で削減できる余地があると思われがちだからです。

繰り返しますが、大企業であれば大量仕入れによる原価率の低下を図ることができるかもしれませんが、中小企業の場合は現実的ではありません。

しかし、製造業や飲食店のように材料を加工する業種であれば、品質の向上・安定化によって歩留まりを改善することで、コスト削減にもつながります。

最後に

価格を上げるにせよ、効率化をするにせよ、待ちの姿勢ではなく、能動的に取り組む必要があります。

人口減少、少子高齢化で労働力の確保が難しくなっているので、直接業務だけではなく、間接業務においても可能な限り効率化を図り、人の手を介する部分を減らしたいところです。

以上、参考になれば幸いです。

経営に関するご相談、お問い合わせなど、お気軽にご連絡ください。

CONTACT