中小製造業が抱える問題の根本原因

人手不足、設備の老朽化、後継者難、収益性の低下……など、多くの中小製造業が、これらの問題に直面しています。
しかし、これらはあくまで表面に現れた事象に過ぎません。

こうした事象の背景には、現在の中小製造業の大半に共通する構造的な要因が存在しています。

結論から述べると、現在の日本の中小製造業の大半は、事業承継された会社だという点にあります。
これこそが、多くの中小製造業が直面する問題、および問題を解決できない大きな理由の一つです。

承継者=自分で起業していない

現在、日本の中小製造業の経営者は、そのほとんどが創業者ではなく、親や親族から会社を受け継いだ承継者です。

もちろん、起業した人と承継者を比較して、承継者よりも起業家が偉い、すごいということではありません。

しかし、起業家はどういう商売をしたら自分は食べていけるのか、儲かるのかということを起業前に考えます。
起業後は、軌道に乗せられるようにソロバンを弾きながら、どのようにしていけば良いのかを考えてきました。

この、自分で事業ドメインやビジネスモデルを考えた経験の有無は大きな違いです。

事業承継をすると、顧客や従業員といったステークホルダーに対する責任を負った状態で経営者としてのスタートを切るという点に関しては、間違いなくリスペクトに値することです。

ステークホルダーへの責任を果たすためには、既存の事業をそのまま引き継ぐことが最も確実だったかもしれません。
しかし、未来永劫そのままの形を守り続けるということが、妥当な姿勢かどうかは別の話です。

繰り返しますが、自分で事業ドメインやビジネスモデルを考えていないと、現状を維持すること以外の選択肢が生まれにくいのではないでしょうか。

外部環境は変わる

初代は、戦後の復興期に起業し、高度経済成長期に拡大。
その後にはバブル経済があり、バブルがはじけた後も日本の人口は増加傾向でした。
2008年にはリーマンショックがあり、同年をピークとして日本の人口は減少に転じました。
少子化・高齢化が進む時代の3代目は、経済が拡大傾向だった初代と2代目と同じことをやっていてはいけません。

製造業の中でもBtoBの完成品メーカーのように、顧客との距離が近い企業は、環境やニーズの変化には比較的敏感だと考えられます。

しかし、大手企業のサプライチェーンの中で受注生産をしている孫請け、ひ孫請け、玄孫請け企業となってくると、元受けの要望への対応ですから、経営環境の変化に鈍感になる可能性が高いです。

そういった企業になると、環境が変わる中で、いかに現状を維持するかといったインセンティブが働きがちになります。

既存の事業を再設計する

経営とは経営資源を活用して外部環境に適応することです。
製品を作って、提供して、対価をいただく、この一連のことは業務であって経営ではありません。

経営環境の変化に適応して、新たに自社の事業を再設計する必要があります。
それは、決して特別なことではなく、初代は外部環境に合わせて事業の再定義・再設計を細かく繰り返しつつ、現在の会社の礎を築きました。

同じことを、現経営者も行う必要があります。

まずは、事業目的の再定義

自分たちは、何のために事業を行うのか。 誰に、どのような価値を提供するのか。
会社が存在する意義は何か。

経営理念につながる、経営において最も抽象度の高いレイヤーですが、経営者という立場であれば、この高さの視座で自分が経営する企業を見ることが求められます。

次いで、事業ドメインの再構築

現在の市場に居続けるのか、新たな市場を開拓するのか、既存の付加価値を提供し続けるのか、それとも新たな付加価値を提供していくのか、現在の市場の状況に鑑みて再定義する必要があります。

その結果、今と変わらないというのは良いと思いますが、どのように環境が変わろうとも、自分たちは何も変わらないという前提でいると、面白くない未来が待っているかもしれません。

最後に

会社を守るということは、何も変えないことではありません。
会社という器、ステークホルダーへの責任は承継していますが、未来に会社を残すためには、環境の変化に対応する必要があります。

そのためには、業務レベルの視座ではなく、経営レベルの俯瞰した視座を持つ。
まずはその認識を持つところから始めてみてはいかがでしょうか。

以上、参考になれば幸いです。

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