2025年をDX元年に

我が国における事業者の99.7%は中小企業です。
中小企業は雇用の7割を生み出し、付加価値の過半数を生み出す経済の主役です。
しかし、主役である中小企業のDXが進んでいないのが実情です。

市場の変化や労働力不足に対応するためにも、DXの推進が不可欠です。 今後の成長のために、まずは小さな一歩からDXに取り組み始めましょう。

DXとは

総務省によると、DX(デジタルトランスフォーメーション)は以下のように定義されています。

企業が外部エコシステム(顧客、市場)の劇的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること

単にアナログな作業をIT化するといったレベルではなく、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルにより競争優位性を確立することです。

人体で例えると、歯が悪くなったため入れ歯にする、膝が悪いためにばね式の膝サポーターといった不足を補助で補うものではなく、サイボーグのように生身の体(元々の経営)に人工的な技術(IT)を付与して、より能力を高めた状態といえるでしょう。

中小企業のDXの現状

ITの進歩は目覚ましく、新しいビジネスが誕生したり、ITによって考えられないような業務の効率化も果たされたりしています。
同時に、様々な環境の変化に対応するために、経営資源に乏しい中小企業こそ積極的にDXに取り組みたいところです。

しかし、2023年10月に発表された中小企業基盤整備機構の調査によれば、やはり中小企業のDXに対する取組は進んでいるとは言えない状況です。

2025年の崖

西暦2000年の時にも西暦の下二桁が00に戻ることでシステムの誤作動が起きる2000年問題が取りざたされました。
実際には騒がれたほどの影響はなかったようですが、2025年にも昭和100年にあたるため、何らかのシステム上のトラブルが起こることが予想されています。

経済産業省が平成30年(2018年)に「2025年の崖」として対応するための呼びかけと、DXを推進するように啓蒙しています。

参考:DXレポート(サマリー)

多くの日本企業が2025年までにDXに取り組まなければ、レガシーシステムの維持費や競争力低下により年間12兆円もの経済損失が生じる可能性があるとされています。

逆に言えば、レガシーシステムへの依存から脱却し、DXに取り組むことで、2025年からの競争環境において先んじることができる可能性が高まります。

中小企業がすべきこと

DXを進めるにあたって、中小企業がすべきことをまとめました。

経営環境の変化を認識する

2025年の崖同様に、2025年問題が取りざたされています。
団塊の世代が75歳以上となり、様々な社会問題を引き起こすと言われています。
中小企業の経営に関連することであれば、ただでさえ労働力の確保が難しくなりつつある中で、ますます労働力不足が深刻になります。

このような状況において、今までの企業・事業のあり方、業務のやり方を続けることはできません。 むしろ、現状維持をしようとするのは後退と同義です。

環境変化は悪いものだけではないでしょうが、いずれにしても環境変化に対して対応するために変わらなくてはいけないということを、経営者様はもちろんのこと、従業員の方々も認識する必要があります。

DXに対する理解

労働力の確保が難しいからITで補完するのはDXではありません。
繰り返しですが、ITの利活用によって、最終的に競争力を高めることがDXです。

IPA(独立行政法人情報処理推進機構)がDXに関する情報の提供をしています。
DXとは何かといったことから、リスキリングのためのコンテンツの紹介など、様々な情報の提供がされています。

参考:IPA『デジタルトランスフォーメーション(DX)』

IPAのYoutubeチャンネルではDXについて、動画で分かりやすく解説していますので、併せてご参照ください。

経営戦略の見直し

DXとは、安直にシステムを入れ替えたり導入したりするといったことではなく、競争力を高めるためにサイボーグ化することで、事業に対する能力を向上することが必要です。

つまり、業務のIT化ではなく、経営とITとを有機的に連携させ、新たなビジネスモデルの創出、新たな付加価値の創出といったことを目標とします。
そのため、ITを活用することを前提として、経営戦略面から見直す必要があります。

人材の育成と確保

DXを進めるにあたって、もちろん業務もさらなるIT化による効率化と高付加価値化を行います。

社内でITやデジタル技術を扱える人材を育成する必要がありますので、既存社員に対するITリテラシー教育を実施することが必要です。

過去の記事でデジタルリテラシー協議会が提唱しているDi-Liteについて書いていますので、併せてご参照ください。

また、必要に応じて外部からのデジタル人材の採用も行う必要もあるでしょう。

外部のリソースの活用

企業に必要な人材を採用できれば理想ですが、IT人材は不足傾向にありますので、実際に雇用することは難しいかもしれません。 したがって、外注やコンサルタントのような外部のリソースも積極的に活用することが必要です。

規模が小さい企業ほど外注やコンサルタントといった外部のリソースを活用せず、自社でなんとかしようとしがちですが、実際にどういったシステムが必要なのか、いざシステムを導入するというレベルはちょっと勉強した程度の知識やスキルでは太刀打ちできません。

DXを推進することで、環境に適応して成長する、そのための投資だと考えて他者の力をうまく活用することをお勧めします。

最後に

経済産業省が数年前からDXを推進していること、厚生労働省の人材育成助成事業でITやデジタル人材の育成に力を入れていること、総務省統計局がデータ活用を推進していること、これらは全て労働人口の減少や市場縮小に対して、新たな付加価値の向上やビジネスモデルの構築を目的として包括して行われています。

DXなんて規模の小さな企業でできるのかと思われるかもしれませんが、むしろ規模が小さい企業ほど、小回りが利くため、変化の対応はしやすいはずです。

DXといっても一気にゴールまで行くことはできませんので、一歩ずつ進んでいくことが必要です。 まずは2025年を企業がDXにより次のステージに行くためのDX元年としましょう。

以上、参考になれば幸いです。

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