
原材料費、エネルギーコスト、人件費、様々なものの価格が上がっています。
原材料費やエネルギーコストは為替相場で価格が下がることはありえますが、労働力不足も相まって、人件費は上がりこそすれ、下がることはありません。
受注生産においても、コストの上昇は適切に受注単価に反映したいものの、実際は材料費やエネルギーコストとは異なり、人件費は単価アップの理由としてはなかなか認めてもらえないというのが現実ではないでしょうか。
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人件費とその他のコストとの違い
原油・金属や電気代などは客観的に価格が上がっていることを説明しやすいものです。
そのため、比較的交渉の材料としての説得力を持つものだと考えられます。
それに対して、人件費は生産効率化によって削減できる余地があるのも事実です。
発注側から見ると、まだ企業努力でカバーできるのではないかということで、単価アップの理由として認めづらいというのが実態でしょう。
人件費高騰への現実的な対処策は生産性の向上
人件費の高騰を価格に転嫁しづらいのであれば、生産性を向上させるというのが現実的な打ち手だと考えられます。
直接業務
材料を加工し、仕掛品・製品となる生産過程と、それに伴う情報の流れに改善の余地はないでしょうか。
付加価値に寄与しないプロセスは可能な限り削減したい対象になります。
あるいは、従業員も給料が下がるのが嫌で、無駄な残業や作業を発生させていないでしょうか。
人手不足にお悩みの企業は多いですが、余計な作業に人を割いている企業も少なくありません。
間接業務
生産性というのは直接業務だけとは限りません。
むしろ、受発注、日報、検査記録、口頭連絡といった、見えにくい間接業務の中にこそ、改善余地が潜んでいるのではないでしょうか。
間接業務も製造原価の一部として配賦されています。
そのため、間接業務を効率化することにより、製造原価の引き下げが可能になります。
加えて、間接業務の効率化によって、その人材を直接業務に再配置することが可能になります。
全体の人件費は変わりませんが、作業者1人あたりの生産量が増えることで、結果として製品1単位当たりの人件費は下がります。
生産性の向上のヒント
では、どのように生産性を向上させていけばよいか、いくつかご紹介します。
プロセスを見直す
直接業務・間接業務の生産性向上策として、今まで当たり前だと思っていた業務のプロセスを見直すということが実行しやすいと考えられます。
直接業務であれば、業務フローの中でどのような作業が実際に発生しているのかをピックアップし、ムリ・ムラ・ムダを削減します。
(参考記事:合理化の3S)
業務の中でIT化すると作業工数が削減できる、あるいはゼロになるといったことはIT活用の価値があることです。
ただし、IT化やDXそのものが目的ではないので、その点はご留意ください。
(参考記事:IT化、DXのために)
社外のリソースを活用する
ただでさえ中小企業はリソース(経営資源)が乏しいため、効率的に活用したいところです。 しかし、実際は基本的に規模の小さい企業ほど、社内で何とかしようとする傾向にあります。
(参考記事:外部の資源を活用する)
むしろ、商工会・商工会議所や各都道府県にあるよろず支援拠点といった、公的な相談窓口の活用というのが挙げられます。
無料または非常に安価にサービスを受けることができる点が大きなメリットです。
基本的に無料であるために、サービス内容は民業圧迫にならない範囲にとどまるものの、うまく活用できれば力になるはずです。
(参考記事:相談員や専門家の選び方)
ただ、公的機関も企業の支援が仕事はいえ、相性というものは存在します。 特に、やってもらって当然といった態度は控えたいものです。
(参考記事:公的機関の支援を受けやすい経営者、受けにくい経営者)
また、公的機関の無料のサービスから一歩進み、対価を支払ってコンサルタントを活用するという選択肢もあります。
様々なコンサルタントがいますが、結局は人間として信頼できるかどうかでのご判断になるでしょう。
(参考記事:コンサルタントのタイプ)
最後に
取引の公平性を進めるために「パートナーシップ構築宣言」という経済産業省の制度もありますが、あくまでも発注側が行うものですから、全ての企業に当てはまるわけではありません。
やはり、自社の利益を守るのは、自社でしかできないと考え、人件費が高騰する時代に備える必要があるはずです。
いきなりゴールを目指さなくても、まずはアナログな作業のデジタル化、人の手が介する作業をITで自動化といったところから始められてはいかがでしょうか。
以上、参考になれば幸いです。