
現状維持は安定ではなく、企業にとっての衰退を表す時代です。
我が国の人口の減少、少子高齢化、ITの進歩といった様々な環境変化に対して、企業として対応して変化していく必要があります。
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現状維持が衰退を招く理由
なぜ、企業が現状を維持しようとすると衰退につながるのでしょうか。
様々な環境変化の中で、大きな3つを取り上げます。
人口減少
我が国の人口は2008年の1億2,808万人をピークに減少に転じています。
人口の減少はずばり、国内市場の縮小を表します。
人口が増えていた時代であれば、人口増加に伴って市場拡大しているため、同じことを続けていても、売上高は上がっていったかもしれません。
しかし、人口が減少している現在において、何も変わらなければ、人口減少に伴う市場縮小により、売上高は減少します。
少子高齢化
先進国は概ね少子高齢化しています。
早急に対策ができることではありませんので、この傾向は簡単には変わらないでしょう。
少子高齢化しているということは、若い年齢層の労働力の確保が難しくなります。
競争力を失う、あるいは事業そのものがなりたたないといったこともあり得ます。
また、人口構成が変わるということは、市場のニーズも変化しています。
社会に対して提供すべき付加価値自体が変わっていきます。
ITの進歩
技術の進歩は社会へ大きな影響を与えます。
特にITは中小企業も導入がしやすく、その恩恵を受けやすいものです。
例えば、コロナ禍においてオンライン会議が一気に普及しましたが、オンライン会議によって遠く離れた相手と移動時間ゼロでコミュニケーションが取れるようになりました。
つまり、今までは距離の制限からビジネスの対象でなかった相手とビジネスができるようになりえます。
また、移動にかかっていた時間がなくなるため、その分の時間をうまく活用できれば、さらに付加価値を生み出すことも可能です。
うまくITを活用できれば、競争力の強化につながりますが、いつまでも従来の経営をしていると競合に対して後れを取ってしまいます。
「需要>供給」⇒「需要<供給」
寒くなると冬用の服を着て、暑くなると薄着になるのと同様に、企業も環境の変化に対応していく必要があります。
特に、戦後の復興期、高度経済成長期のように、国内経済が拡大しているときは需要に供給が追い付いていなかったため、仕入れれば売れた、製造すれば売れた時代だったのかもしれません。
不等号で表すと「需要>供給」でした。
しかし、現在はモノ消費よりもコト消費と言われるように、物的充足が進んだこと、経済的停滞による価値観の変化によって、需要に対して供給過多の時代といえます。
同様に不等号で表すと「需要<供給」となります。
つまり、「需要<供給」時代であるにも関わらず、「需要>供給」の時代の感覚で経営をしていたら、時代に合わずに衰退が待っています。
中小企業が取るべきアクション
では、変化に対して中小企業はどのように対応すべきでしょうか。
ビジョンを描く
今後の環境の変化を予知することはできませんが、ある程度検討することは可能です。
少なくとも、労働力確保はますます困難になるというのはイメージできるでしょうし、最低賃金は上がりこそすれ、下がることはないでしょう。
つまり、環境の変化に合わせて従業員一人当たりの売上高(提供する付加価値)を上げていかなくてはいけないということです。
そのためには、未来志向のビジョンを描くことが必要です。
あくまでも目先の短期的利益にとらわれず、世の中の変化に対応して従業員の方々が活躍し、待遇に反映させることができている状態です。
新しいビジネスモデル、他社とのコラボレーションといったことは思い描けないでしょうか。
どのようなビジョンを描けばよいのかと思われる場合は、DXに取り組まれてみてはいかがでしょうか。
ITの発展はますます進みますので、ITと融合することで事業の進化も期待できます。
制度や施策の活用
経済産業省や厚生労働省は、中小企業向けに様々な施策を提供していますので、適宜活用するということも手段の一つです。
当然ながら、それらの施策は中小企業が社会の変化に対応するために予算を取って行うものです。
注意点ですが、補助金や助成金をもらうことが目的になってしまっては本末転倒です。
あくまでも描いたビジョンを達成するための施策であって、補助金や助成金のために事業や投資を行う訳ではありません。
補助金や助成金の代書業者の養分になってしまうだけで、自社は無駄な対価を支払うだけになってしまいます。
外部の専門家を活用する
中小企業はただでさえ経営資源に乏しく、日々の業務に追われがちです。
その中で、何でも自社でやろうとするのは良くありません。
ましてや、専門外のことであれば、適切な専門家を活用しないと労力をかけたものの成果を得ることができなかった、あるいは知識もノウハウもないために何も進まなかったといったことにもなってしまいます。
経営に関する相談先で一番多いのが税理士・会計士ですが、税務や会計の話以外は専門外です。
また、同業の経営者が相談先として次いで多いですが、同じく専門家ではないので、適切な相談相手かどうかは疑問符が付きます。
じゃあ誰に相談すればよいのか、適切に相談できる専門家がいないということであれば、各都道府県には国が設置した経営相談窓口であるよろず支援拠点がありますので、そちらにご相談されたら結構です。
よろず支援拠点以外にも、独自で経営相談窓口を設置している自治体もありますし、商工会議所や商工会もありますので、そちらにご相談いただいても結構です。
何を相談したら良いのか分からないといったレベルから相談をすることが可能です。
基本的に相談は無料ですので、うまく活用することをお勧めします。
(補足事項)専門家の活用について
専門化活用の際にはいくつか注意事項がありますので、補足します。
結論を述べると、経営全体を俯瞰してサポートしてくれる専門家に相談してください。
大きな変化への対応は、目先の変更だけではとても対応しきれないからです。
例えばDXをするにあたってはアナログな作業をIT化すればよいといったレベルの話ではありません。
過去の記事「2025年をDX元年に」にもあるように、経営とITを融合させて、競争優位性を得ることが目的です。
システム会社に依頼すればやってくれるというものではありません。
また、補助金に申請するにしても、採択件数や採択率を売りにしている専門業者が妥当な業者かどうかは分かりません。
代書業者は代書をしないと自分の売上にならないため、補助金に申請しましょうと言ってくるかもしれません。
しかし、繰り返しですが、あくまでもビジョンがあって、それを達成するにあたってタイミングが合うから補助金に申請するのであって、補助金自体は課題達成の手段でもなんでもありません。
実際に、代書業者に依頼して補助金に採択されたものの、結局利益は上がっていない事業者が周囲にたくさんいるのではないでしょうか。
それだと無駄に費用と時間を浪費しただけです。
最後に
人間は変化が嫌いな動物です。
しかし、変化を恐れることなく、未来を見据えて行動をしていくことが必要です。
幸いなことに、規模が小さい企業ほど小回りが利いて変化への対応はしやすいです。
まずは世の中がどう変わっているのか、見渡してみてください。
人口減少、少子高齢化、ITの発展以外にも、業界の変化、顧客の業界の変化、仕入れ元の業界の変化、海外の動きはどうでしょうか。
変化しなくてはいけないと感じるはずです。
それから、どう変わっていきたいかを検討されてはいかがでしょうか。
以上、参考になれば幸いです。