最低賃金が上がる意味

2025年度の最低賃金引き上げは過去最高の引き上げ幅になっています。前年度よりも少ないところでも63円、多いところでは82円の引き上げになり、すべての都道府県で最低賃金が1,000円を超えることになりました。

参考(外部サイト):令和7年度地域別最低賃金の全国一覧

最低賃金は下がらない

今後の上がる時期や上がる金額は不明ですが、間違いなくいえることは、最低賃金は上がりこそすれ、基本的に下がらないということです。

「売上が増えたら賃上げする」
「余裕がないから賃上げできない」
「賃上げに対応するために働く時間を減らしてもらう」

といった事例は枚挙に暇がありません。

しかし、本来の考え方は全くの逆です。最低賃金は上がり続ける、つまり不定期とはいえ賃上げが前提、その原資である売上も上げ続けなければいけない。

つまり、売上の向上が経営の大前提です。

自社のステージ

大手企業のように市場のシェア争いをしている企業であれば、競合の売上が伸びる=自社のシェアを奪われて売上が下がるということですから、自社がやられないように自社の売上(=シェア)を伸ばそうとします。

携帯電話業界におけるDoCoMo、ソフトバンク、au、楽天がイメージしやすいかと思われます。

それに対して、中小企業の場合は大手企業のようにゼロサムゲームをしているわけではないので、現状維持したい、現状維持できれば良いという考えになりがちなのかもしれません。

たとえば、売上を上げたくないとは思わないにしても、自社の売上が3億円としたら、それを4億円、5億円といったように、より上のステージを目指すことは考えていないといった具合です。

しかし、前述のように人件費が上がるわけですから、売上高の維持ではなく、向上させていく必要があります。

変わらない企業は厳しくなる時代

最低賃金の上昇に対して、「最低賃金が上がったので何か助成金はないか」と考えていては、この先は心配です。

現状維持バイアスが働いて、外部環境は変わらない、これまでのやり方を変えたくないと思うことは理解できますが、現実は残酷です。

外部環境は常に変わりますし、外部環境の変化に経営資源をやりくりして対応することが経営です。

2008年をピークに我が国の人口は減少を続けています。市場縮小や人材確保の困難化という、一般的には企業にとって望ましくない方向への環境変化も進んでいます。

同時に、ITの発展といった企業にとってプラスになる環境変化も起こっています。

つまり、親の世代──人口が増えていた昭和や平成前半とは、会社のあり方も、やり方も変えていかなくてはいけません。

何が変わるか、何を変えないといけないか

さまざまな環境の変化がありますが、企業ごとにプラスの影響を受けるものなのか、マイナスの影響を受けるものなのかは異なります。

環境の変化がどのように自社(自社のいる市場)に、顧客市場に、仕入れ元市場に影響を与えるかを検討してみることをお勧めします。

環境変化といっても何を基準にすればよいのかという場合は、PEST分析をされてみてはいかがでしょうか。

参考:経営学を考える(PEST分析)

しかし、環境変化の自社への影響は常に起こっていることですから、環境の変化に対して常にアンテナを張っておく必要があります。

普段から外部の情報を取り入れる習慣がないならば、インターネットのニュースサイトで経済ニュースや業界団体のニュースを読むところから始められるのも良いと思われます。

最後に

経済産業省は以前からDXや海外進出などを提唱し続けてきましたし、同様に総務省も何年もオープンデータの整備を進めつつ、データ活用を提唱しています。文部科学省もデータ活用のために、学校教育における統計学に力を入れています。

最低賃金の引き上げも、付加価値を上げろ、もっと業務効率化をしろ、現状から進化しろという厚生労働省からのメッセージです。

単にコストが上がったから、他を削ってなんとかやりくりしようではなく、もっと売上高を上げるために次のステージに進むことを考える必要があります。

以上、参考になれば幸いです。

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