
和歌山県白浜町にある「アドベンチャーワールド」には、ジャイアントパンダがいましたが、2025年6月に4頭とも中国に返還されました。
大きな観光資源を失った白浜町はその後どうなったのでしょうか。白浜町の事例は、成功体験を持つ企業が常に直面しうる状況を示しています。
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白浜町のその後
長い間パンダを観光資源の目玉としてアピールしていた白浜町ですが、中国への返還を機に違う魅力を発信するように切り替えました。
その結果、パンダ返還後の今年7~8月の白浜町の観光客数は宿泊と日帰りを合わせて前年同期よりも1.2%伸びたということです。
数字そのものは誤差かもしれませんが、パンダがいなくなったから大幅に観光客が減ったということではないことを示唆していると考えられます。
参考:産経新聞『和歌山・白浜ポストパンダ戦略は観光客増で意外に健闘 町長「これまで思考止まっていた」』
白浜温泉は、有馬温泉、道後温泉と並んで日本三古湯として、日本書紀や万葉集にも登場します。また、白浜の名前の由来である砂浜は、その美しさが日本一とも称されています。
パンダは中国からの借り物であり、白浜町だけで独占できる資源ではありません。パンダのみに依存した観光客誘致は、危ういものだったといえます。
成果が出ている時ほど戦略は更新されない
強力な看板商品、安定した受注を得られる取引先など、これらは経営上のプラス要素だと言えるかもしれませんが、同時に変化の阻害要因にもなりえます。
- 今後もプラス要因となりつづけるのか
- これらが失われたら何が残るのか
- 他の柱を建てる必要はないか
上手くいっているほど、こういったことを考えなくなりがちです。
アドベンチャーワールドのパンダは、中国がキャスティングボードを握っていました。中小企業の経営で例えれば、特定顧客への過度な依存をしているような、相手の都合で状況はいくらでも悪い方向に変わりうるリスクをはらんでいました。
つまり、成功要因に過度に依存していた場合、環境の変化で成功要因がなくなった場合に次の手が打ちづらい状態になってしまう可能性が高いということです。
イノベーションのジレンマとの比較
アメリカの経営学者であるクリステンセンが提唱した理論で「イノベーションのジレンマ」というものがあります。
優れた商品を持つ企業が、既存顧客の要望に合理的に応え続けた結果、当初は魅力が低く見えた破壊的イノベーションを無視し、それを育てた新興企業に市場を奪われてしまうという現象です。
アドベンチャーワールドには、市場を奪う破壊的イノベーターが現れたわけではありません。これはイノベーションのジレンマとの相違点です。
しかし、成功体験が意思決定を遅らせ、現在の強みに依存してしまう点は白浜の事例とも共通点だと言えます。
非常に厄介なのは、現在の稼ぎ頭である主力事業に注力すること、アドベンチャーワールドだとパンダを売りにすること自体は、その時点では合理的で正しい判断だったということです。
合理的であるがゆえに、他の可能性を見失う危険性があったということです。
最後に
白浜町はパンダという強みを失ったからこそ、他の強みを生かす方向に切り替えました。試みが上手くいけば、パンダのような不安定な強みではなく、長期にわたって維持できる模倣困難性の高い強みを作り上げることができるでしょう。
白浜町、アドベンチャーワールドを例にしましたが、特定の商品、特定の資源に過剰に依存している企業はたくさんあります。
成功体験は、時として呪いのように作用し、次の成功の阻害要因になり得ます。上手くいっている時だからこそ、次の柱を育てるための種まきを行うべきではないでしょうか。
以上、参考になれば幸いです。



