対策ができないのは事象を事象のまま捉えているから

ロシアのウクライナ侵攻、アメリカ・イスラエルとイランとの紛争は世界中のエネルギーコストの高騰につながり、エネルギーコストの高騰は、その他の様々なコストに影響を与えています。

材料費、人件費、エネルギーコストなど、昨今のコスト高騰に頭を悩ませている経営者様も多いのではないでしょうか。

コスト(費用)が上がるということは、企業にとって利益が下がることを意味します。
コストが10%増加したら、営業利益はどの程度影響を受けるでしょうか?

加えて、我が国では少子高齢化の進行によって、人材採用も難しく、多くの企業で人手不足の状態が続いています。
少子高齢化は人口構成が原因ですから、5年や10年といった短期スパンで解決するといったことは望めません。
現状の体制を今後も維持できるでしょうか。

こういった経営にとって都合の悪い事象を認識しているにも関わらず、特に中小企業においてはなんらかの対策に着手しない、あるいは効果的な対策が打てないケースが非常に多いのではないでしょうか。

現状維持バイアス

もしある部分の費用が増えることで利益に影響が出るのであれば、利益率と利益額の点から以下のような対策が考えられます。

  • 利益率の維持…他の部分の費用を見直す。
  • 利益額の維持…売上アップを図る。

でも、実際は「うちもやらないといけないと思っている」で止まっていて、対策を打とうとしない。
あるいは、妥当性が低くて効果が得られない対策しかしないということが見かけられます。

対策を打とうとしない理由の一つとして現状維持バイアスがあります。
そもそも人間は変化を嫌います。現状より良い未来が期待できたとしても、都合が悪くても慣れた現状を維持しようとする傾向があります。
頭では対策をしたいと考えているつもりでも、心理面では都合の悪い現状を変えるのが嫌だということです。

費用削減や業務改善は収益に直接影響するため、企業の状態に関わらず常に行う方が良いことです。
しかし、利益に影響が出ていても、変化のリスクそのものを変化しないリスクよりも大きく見積もってしまっています。

問題が見えているか

現状維持バイアス以前に、根本的な理由があると考えられます。
それは、そもそも問題が見えていないということです。

「問題」とは「現状(As Is)」と「理想(To Be)」とのギャップを指します。

  • 売上の減少
  • 費用の増加
  • 従業員の退職に伴って労働力の不足

このように、経営をしていると様々な都合の悪いことがありえますが、これらはあくまでも事象であって、「問題」ではありません。

より詳細に書くと、目標売上10億円に対して、実際の売上が9億円だったということであれば、そのギャップである1億円足りないことが問題です。
繰り返しになりますが、「下がった」ということ自体は、あくまでも事象であって問題ではありません。
仮に売上が下がっても、コストもその分下がって、最終的に利益が減っていないなら、会社への影響は限定的である可能性もあります。

問題が定義できていないと、現状維持バイアスの影響を受け、合理的な判断が鈍ることも考えられます。

事象を事象のまま捉えている

事象を事象のまま捉えていては、妥当な対策を検討することはできません。

事象が自社にとってどういう影響を与えるのか、理想の状態とのギャップは何か、それらを明確にすることで初めて問題として定義できるようになります。

また、その事象が起こった理由は何かを明確にしないと妥当な対策を検討することはできません。

たとえば、あるECサイトが売上低下をしたとします。

  • 検索のアルゴリズムが変わって、検索結果の順位が下がった
  • 競合がプロモーションを強化し、顧客を奪われた
  • 市場自体が縮小した

など、売上低下の理由によって、とるべき対策は変わります。

検索のアルゴリズムが原因なら、テクニックで改善できるかもしれませんが、そもそも市場自体が縮小しているなら、小手先の対策ではなく、数年後を見据えて別の商品や事業を検討する必要があるでしょう。

事象を事象のまま捉えていて、構造化ができていないことが理由で、

事象⇒影響の考慮⇒問題定義⇒原因追及⇒対策の検討

ではなく、

事象⇒対策の検討

になっていると、具体的な対策を検討できない、あるいは当を得た対策を取れないという結果になっているということです。

最後に

何をしたら良いのかわからないのは、事象を事象のまま捉えているからです。
事象を事象のまま捉えている限り、問題は定義できません。

問題が定義できなければ原因も分かりませんし、原因が分からなければ適切な対策を検討することすらできません。

  • 売上が下がった。
  • コストが上がった。
  • 人が足りない。

こうした事象を見て対策を考えても、せいぜい表面的な対応にしかなりません。

まずは事象が自社にとってどのような影響を与えるのか、理想の状態とどれだけのギャップがあるのかを整理することから行う必要があります。
事象を問題として定義し、その原因を明確にすることで、初めて妥当な対策を検討できるようになります。

つまり、会社にとって合理的な選択肢を取ることができるようになります。

以上、参考になれば幸いです。

執筆者:
待谷 忠孝(中小企業診断士)

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