経営戦略を実現する評価設計

中期経営計画を作って社内で共有したとしても、社内の全員が同じ方向に向かうというのは、現実的には難しいことかもしれません。

経営者と従業員のように、立場が異なれば決して同じ視座にはならないですし、従業員それぞれで、動機もモチベーションも異なるからです。

計画を適切に実行するためにも、従業員の動機づけと、企業の戦略を一致させる必要があります。

組織が変わらない理由

経営者が、ああしたい、こうしたいと思っていても、従業員は慣れたやり方を変えたくないし、そもそも会社の売上に関心がありません。

営業担当者であれば、自分の売上が上がれば評価につながります。しかし、直接売上に関わらない業務についている従業員は、売上が上がるということは仕事も増えるということなので、歓迎されないかもしれません。

立場の異なる者同士が、共通のルールのもとで「自分の利益を追求することが、結果として会社の望む方向に繋がる」という形で動機づけされる仕組みが必要です。

そのためには、会社の方向性と自分自身に対する評価とを一致させることが望ましいといえます。

評価を数理モデルで再定義する

経営者が「顧客満足第一」と言っていても、評価の軸が「件数」だけであれば、現場は当然「件数」を優先します。

立場の違いを埋め、戦略を浸透させるには、理念という抽象的な言葉を、評価という具体的な数字へ翻訳する必要があります。

戦略をダイレクトに従業員の動機へ繋げるために、評価を以下の数理モデルとして再定義します。

E=n=1N(wnxn)E = \sum_{n=1}^{N} (w_n \cdot x_n)
  • E(Evaluation): 最終的な評価スコア
  • Xn(Variable): 評価対象となる業務の成果や行動。
  • Wn(Weight): その項目をどれだけ重視するかという「乗数」。

3つの変数について

E(Evaluation)

Eは最終的な判断基準となる値です。評価テーブルと連動させることで、公平性・透明性を担保した評価となります。

例えば、スコアEの範囲を 0〜100点 としたとき、以下のようなテーブルを提示します。

  • 90点以上: S(特出した成果・理念の体現)
  • 70点以上: A(期待を上回る貢献)
  • 50点以上: B(標準的な期待に応えている)
  • 50点未満: C(改善の余地あり)

評価面談でEとこの評価を共有することで、従業員側は自分の評価を定量的に理解できます。あとどれぐらい頑張る必要があるのか、もっとこうしてほしいというのが伝わりやすくなります。

Xn(Variable)

Xnは、現場で発生するあらゆるパフォーマンスを指します。定量的な指標と定性的な評価の両方を含みます。

  • 定量的指標: 売上高、新規獲得数、残業削減時間、エラー率などの計測可能な数値です。
  • 定性的指標: 顧客からの感謝の言葉、改善提案の質、理念に沿った行動の有無です。多面評価を用いて数値化し、変数として組み込みます。

Wn(Weight)

Wn(Weight)は、各変数に対する経営者の期待値であり、通常は0超~1以下の範囲で設定し、評価上の重点を表す乗数の合計を 1(100%)とするよう配分します。

例えば、従業員に挑戦を促すのであれば、「新規提案数」や「失敗から得た知見の共有」のWを高めに設定するといったことです。

現場の従業員は、どのWn(評価項目)が大きく設定されているかを見るだけで、経営者が自分たちに何を期待しているかを明確に理解することができます。

最後に

立場が違えば、視座も要望も異なります。そのため、同じ単語でも同じ意味として捉えることすら難しいのが現実でしょう。

しかし、数字は共通言語になります。

戦略と評価とを一致させることで、従業員が自分の評価のために動いた結果が、会社の戦略を推し進める結果になります。

以上、参考になれば幸いです。

執筆者:
待谷 忠孝(中小企業診断士)

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