
経営上の問題解決において、生成AIを活用している方、活用しようとしている方も多いのではないでしょうか。
果たして、AIはどこまで問題解決の力になるのでしょうか。
Table of Contents
生成AIがやっていること
生成AIは大量の公開テキストを与えられ、そこからパターンを学習します。ただ、学習といっても、人間のように意味を理解している訳ではありません。
質問内容に対して、文法的な意味を解釈し、大量のデータから統計的なパターンに基づいてもっともらしい回答を生成します。
もちろん、学習したパターンをもとに、文脈の整合性や推論の構造、論理的な因果を統計的に再現しているので、人間が回答をしたような挙動になります。
AIは入力された内容を考えて回答しているように見えていても、実際には思考をしている訳ではありません。
経営上の問題解決は可能か
結論から述べると、経営上の問題解決方法を生成AIに聞くのは妥当性が低いです。それは、以下の理由によるものです。
(人間側の問題)適切なプロンプトが不可能
そもそも、自分の会社ですから主観で見ています。そのため、自社の問題点を全て客観的に把握できません。
また、人は自分が伝えるべきことを100%言語化できません(詳細は過去のコラム『言語化できる範囲』をご参照ください)。
これはプロンプトエンジニアリングの問題ではありません。具体的な事象の抽象化、あるいは抽象的な事柄の具体化において、単語の意味が人間側とAI側とで一致しているとは限りません。また、どうしても言葉にできない領域も存在しています。
(AI側の問題)与えられた情報でしか判断できない
人間であれば、情報が不足していると思えばさらなる情報を要求しますし、必要に応じて適宜確認をしながら話を聞くといったように、より伝えたいことを正確に引き出そうとすることができます。
しかし、AIは回答するために必要な前提条件を自力で発見できません。欠落していることがあっても自動で特定することができないため、情報の不足分を自分からは尋ねません。
仮に質問をしたとしても、統計的にありそうな質問をするだけで、問題を解決するために必要な質問ではありません。
(AIの問題)AIは思考をしていない
AIはArtificial Intelligenceの略で、日本語ではそのまま人工知能と言われていますが、実際には知能を備えているわけではありません。あくまでも、知能を備えているように見えるだけであって、人間のように考えている訳ではありません。
意味も因果も理解せず、学習データ中のパターンを再構成しているだけです。
問題に対して、思考による仮説形成や、因果関係に基づく要因分解はできません。 繰り返しますが、学習パターンの中から、確率統計的に最もらしい文章を作成しているにすぎません。
もしAIが発展したら
AIの性能が向上したら、「与えられた情報でしか判断できない」「AIは思考をしていない」のAI側に起因する2つの問題点はクリアできる可能性があるでしょうか。
その問いに対しては、部分的には可能性はあるものの、完全には不可能だと考えられます。
問題解決には、まず問題の定義が必要です。しかし、現在の統計パターンによる言語生成モデル(LLM)は意味の理解、因果推論といったことができません。
仮に新たな技術が開発されて、実用化レベルになっても、企業ごとの文化、状況、空気感といったデータ化がされない領域が存在している以上、質問できる内容も回答の精度も限定的です。
ヒントはもらえる
AIは考えることはできませんが、知識に関しては人間をはるかに凌駕している存在です。
そのため、経営上の問題解決をAIに求めるのは妥当ではありませんが、ヒントをもらう、壁打ちの相手になってもらうといったことは可能です。
- 論点の棚卸し
- よくあるパターンの提示
- 抜け落ちている視点の提示
といったことは、むしろAIは強みを発揮します。
最後に
生成AIの発展はすさまじく、こんなこともできるようになったのかと思うことはこれからもたくさん出てくるでしょう。
しかし、AIにはAIの限界があります。
特に、通り一辺倒の回答は求められていない経営上の問題は、AIで解決するのは極めて難しいといえるでしょう。
以上、参考になれば幸いです。



