経営学を考える(SWOT分析・クロスSWOT)

経営における各種のフレームワークは、経営者にとってのツールといえるでしょう。
その道具を効率的に活用するためには、その特徴を把握する必要があります。
今回はSWOT分析とクロスSWOTについて、考えていきたいと思います。

SWOT分析とは

SWOT分析は戦略策定においての環境分析として、非常にメジャーなフレームワークです。
内部環境を「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」、外部環境を「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」に分けて分析します。

SWOT分析だけでは内部環境と外部環境をそれぞれ2つに分けただけであり、意思決定には利用できません。
そのため、基本的に単独で使用されることはなく、通常はSWOT分析の後にクロスSWOTを行います。

内部環境(強みと弱み)

内部環境(経営資源)を強みと弱みに分類します。
競合と比較して、優位な点が強み、劣位な点が弱みです。

注意していただきたいのは、強みと弱みとは、あくまでも競合と比較した相対的なものだということです。
競争環境によっては強みが弱みになりえますし、逆に弱みが強みに変わることもありえます。

例えば、「生産スピードに自信がある、だから納期がうちの強みだ」と思っていても、競合も同じ程度の期間で納品できるのであれば、顧客から見たときに違いがありませんので、それは強みになり得ません。
もし、競合の方が自社よりも早いのであれば、相対的に劣っている訳ですから弱みとして捉える方が妥当でしょう。

得意なことを単純に強みと捉えてしまうと、競合と比較して劣位な部分を武器にすることになる危険性があります。

また、強みと事象を混同してしまうというのもありがちです。
強み(弱み)はあくまでもリソースの話であって、その結果得られる事象ではありません。

例えば「顧客満足度が高い」は強みではなく事象であって、顧客満足度の高い理由(経営資源や付加価値を提供しているプロセス)が強みとなります。

リソースと事象を混同してしまうと、クロスSWOTを行う際に意味のない要素をピックアップする可能性があります。

外部環境(機会と脅威)

自社にとって好影響を受けそうな状況が機会、悪影響を受けそうな状況が脅威となります。

強み・弱みは競合と比較ができるのですが、機会・脅威は自分がそう捉えているだけで、実際は違うということも考えられます。

例えば、市場の拡大を売上をアップできる機会と捉えるか、競合が増えるために競争が激しくなる脅威と捉えるかは、分類する自分次第です。
その結果、分析結果が客観的な事実とは乖離する可能性もありえます。

クロスSWOTとは

内部環境の強み・弱みと外部環境の機会・脅威から、自社の進むべき方向や効果的な選択肢を検討する必要があります。
そのためのフレームワークがクロスSWOTです。

機会×強み、機会×弱み、脅威×強み、脅威×弱みのそれぞれを掛け合わせて方向性の検討を行います。大きな方向性は以下の通りです。

機会 脅威
強み 強みを生かして機会をつかむ 強みを生かして脅威を回避する
弱み 弱みを克服して機会をつかむ 弱みと脅威を最小化する

4つの方向性のそれぞれにおいて、いくつ見いだせるかどうかは内部・外部の環境次第なので、強み×機会は複数考えられるものの、弱み×機会が何もないといったことはありえます。

また、4つの方向性のプライオリティは全て同じではありません。
自社の業績に影響を与える時期の早さと影響の大きさから、プライオリティを検討する必要があります。

強み×機会

自社の強みが生きる機会をつかみ、売上向上やシェア拡大などを図る積極的な戦略となります。
自社の成長に直結するので基本的に1番プライオリティが高いといえます。

強み×脅威

自社の強みを生かして脅威を回避する、あるいは脅威による被害を最小化する受け身の戦略といえるでしょう。

弱み×機会

せっかくの機会を逃さないように弱みの補強をを行う戦略です。

弱みは簡単に補強・克服できないから弱みです。
したがって、実践が難しく、また時間がかかるので、他のものよりもプライオリティは低くなる可能性があります。

弱み×脅威

事業からの撤退を含めて、脅威による損害を最小限に食い止めるための戦略です。
実行が遅れるほど悪影響を受けかねないため、迅速に対応すべきなので、プライオリティは高いといえるでしょう。

SWOT分析・クロスSWOTの長所

内部環境を強みと弱みの2つ、外部環境を機会と脅威の2つに分類し、それぞれ2×2のマトリクスにして考えるので比較的容易に方向性を検討することができるという点が長所です。

また、強みと機会という内部と外部それぞれのポジティブな要素だけでなく、弱みと脅威というネガティブな要素も含めるために、バランス良く検討しやすい点が挙げられます。

SWOT分析・クロスSWOTの短所

SWOT分析の短所

SWOT分析は内部環境と外部環境を単純化し、それぞれ2つに分類するという非常に分かりやすいフレームワークではあるのですが、逆に言えばどちらにも分類できないものを見落としてしまう可能性があります。

また、前述したように「強み・弱み」「機会・脅威」の分類は、状況や分類する人の捉え方によって変わります。
環境の分析は客観的でなければ、意思決定の際にノイズになってしまいます。
SWOT分析の結果は、客観的なものというよりは「強みと捉えている」「機会と考えている」という恣意的で曖昧なものと言えます。

強みや弱み、機会と脅威はある程度市場が絞られて競合が確定した後でないと分かりません。
したがって、現在の市場環境において今後の展開を検討するための分析に使用するならともかく、全くの新規事業を検討するにあたってSWOT分析を行うのは妥当ではないでしょう。

また、SWOT分析には時間の概念がありませんので、クロスSWOTも現状の分析しかできないことになります。
数年先のことを踏まえるのであれば、別途数年先を予想したSWOT分析が必要になります。

クロスSWOTの短所

SWOT分析自体が恣意的であいまいであるという欠点があること、SWOT分析の特性上、強みにも弱み、機会と脅威に分類されなかったものに関しては最初から検討材料にならないという大きな欠点があります。

例えば、弱み×機会を検討する際を考えてみてください。
簡単に克服できないから弱みなのであり、弱みを克服して機会を掴む方向性を検討するのであれば、強みにも弱みにも分類されないものを強化した方が効率が良いし、確度が高いうえにコストが少なくて済む……つまり実現性が高いといえるでしょう。

このように、実践的、効果的なものよりも、実現性に乏しい空論やかえって効率が悪いものが優先してしまう可能性があります。

最後に

SWOT分析は1960年代に考案されたものです。
当時の経営環境と現在の経営環境は異なるため、現在ではそのまま使えないこともありえます。

盲目的に取りあえずSWOT分析から……というのではなく、SWOT分析・クロスSWOTが有効に活用できる場面において、前述したような特徴を把握した上で活用する必要があろうかと思います。

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