生成AIに経営の相談をしてはいけない

生成AIの性能は現在進行形で上がっており、業務の効率化においては非常に有用です。

ですが、経営相談の相手としては適切ではありません。
なぜでしょうか。

実際に相談をしてみました

実際にChatGPT、Gemini、Claude(いずれも無料アカウント)に以下を入力してみました。
情報が少ないのは意図してのものです。

私は経営者です
材料費や人件費が上がって大変です
人材採用しようにも、応募がありません
今後どのようにしたらよいでしょうか

以下、生成AIからの回答を提示しますが、読むのは大変だと思われますので読み飛ばしていただいても結構です。

ChatGPTの回答

結論として、多くの中小企業では

  1. 値上げできる事業へ変える
  2. 人を増やさず利益を出せる仕組みに変える
  3. 「採用」より「定着」と「生産性向上」を優先する

の3つを同時に進める必要があります。

材料費や人件費の上昇は、自社だけの問題ではなく、業界全体の構造変化です。

そのため、

  • 価格を据え置いて販売量でカバーする
  • 人を採用して解決する

という従来の成長モデルは機能しにくくなっています。

特に採用については、

「応募を増やすにはどうするか」

よりも、

「今の人数で利益を出せるか」

を先に考える企業が増えています。

例えば、

  • 利益率の低い顧客や商品を減らす
  • 業務を標準化・自動化する
  • 外注やITを活用して人手依存を減らす
  • 高付加価値サービスへ移行する

といった方向です。

経営としては、

売上最大化

利益最大化

人時利益最大化

へ発想を変える企業が増えています。

同じ売上1億円でも、

  • 20人で利益500万円
  • 10人で利益1,500万円

なら後者の方が、現在の人手不足環境では競争力があります。

したがって、

「どうやって人を集めるか」だけでなく、

「人が集まらなくても成り立つ事業構造にどう変えるか」

を考えることが、今後の重要な経営課題になると思います。

Geminiの回答

コストの上昇と採用難が同時に発生している状況は、経営において非常に負荷の大きい局面です。この状況を切り抜けるためのアプローチを、「コスト・収益構造の改革」と「採用・組織戦略の刷新」の2つの軸に分けて整理します。

1. コスト・収益構造の改革(利益率の改善)

材料費や人件費の上昇(コストプッシュ)に対し、従来のビジネスモデルのまま耐えるのは限界があります。まずは利益率を確保するための施策が必要です。

  • 価格転嫁と高付加価値化
    • 単なる値上げは顧客離れを招くため、サービスや製品の「付加価値(スピード、品質、独自の保証、セット販売など)」を高め、納得感のある価格改定(プライシング戦略)を断行します。
    • ターゲット層を「低価格を求める層」から「価値を重視する層」へとシフトすることを検討します。
  • 業務プロセスの徹底的な効率化(省人化・IT投資)
    • 人手不足を前提とした経営へシフトするため、ITツール(業務自動化、AI活用、受発注システムの導入など)による省人化を進めます。
    • 「人がやらなくてもいい仕事」を徹底的に排除・自動化し、限られた人員をコア業務に集中させます。
  • 不採算事業・顧客の整理
    • 利益率の低い商品、あるいは手間の割に利益が出ない顧客(取引先)との関係を見直し、リソースを粗利の高い領域へ集中(選択と集中)させます。

2. 採用・組織戦略の刷新(応募の獲得と定着)

従来通りの求人媒体への掲載だけでは、労働人口減少の局面において応募を獲得するのは困難です。

  • 採用ターゲットの見直しと要件の緩和
    • 「即戦力の正社員」にこだわりすぎず、副業・兼業人材の活用、フリーランスへの外注、シニア・主婦層の採用、未経験者の育成を前提とした採用など、間口を広げます。
    • 特に、特定の専門スキルが必要な業務は、業務委託(アウトソーシング)に切り替えることで、固定費化を防ぎつつ即座に人員を確保できます。
  • 求人メッセージの具体化(他社との差別化)
    • 知名度や給与水準だけで大企業や競合と競うのは不利になります。「柔軟な働き方ができる(リモート、時短)」「経営者との距離が近く裁量がある」「独自の理念や社会的意義」など、自社ならではの強みを言語化して求人票に明記します。
  • 採用手法の多様化(ダイレクトリクルーティング・リファラル)
    • 応募を「待つ」のではなく、SNSを活用した発信や、スカウト型の採用サイトを利用してターゲットに直接アプローチします。
    • 既存社員からの紹介(リファラル採用)は、マッチング率が高くコストを抑えられるため有効です。
  • 離職防止(リテンション)の強化
    • 新たな採用が難しい以上、今いる社員のエンゲージメント(貢献意欲)を高めることが最優先です。適切な評価制度の整備や、働きやすい職場環境の構築を進め、離職による損失を防ぎます。

今後の優先順位としては、まず「自社のどの業務にリソースが過剰に割かれているか」を可視化(棚卸し)し、外注やIT化で代替できる部分を切り離した上で、残ったコア業務に対してピンポイントで人員を補填・配置するアプローチを推奨します。

Claudeの回答

経営環境の厳しさが二重にのしかかっている状況ですね。材料費・人件費の上昇と採用難は、根っこでは同じ問題——「価格と生産性の構造が今の市場に合っていない」ことから来ているケースが多いです。それぞれ分けて考えます。

コスト上昇への対応

まず確認したいのは、御社の価格が今のコスト構造に追いついているかどうかです。多くの中小企業は値上げを「お客様に申し訳ない」と先延ばしにしがちですが、コストが上がった分を価格に反映しないと、利益で吸収するしかなくなり、結果的に人件費や採用予算が削られて悪循環になります。製品・サービスごとに原価を洗い出して、どこが利益を圧迫しているかを可視化し、値上げ交渉や価格改定のタイミングを計画的に作ることが先決です。仕入れ側も、相見積もりや共同購入、支払条件の見直しなど、交渉余地が残っていないか一度棚卸しする価値があります。

人件費の上昇については、単純に「賢く絞る」より「今いる人の生産性を上げる」方向で考えるほうが現実的です。業務を見える化して、誰が何にどれだけ時間を使っているかを把握すると、意外と「本来は要らない作業」「重複している作業」が見つかります。多能工化(一人が複数業務をこなせる体制)を進めると、採用が難しい状況でも既存人員での対応力が上がります。

採用難への対応

応募が来ないというのは、求人の出し方そのものを変える必要があるサインです。「募集して待つ」という発想から「探しにいく」発想への転換が構造的に必要です。具体的には、既存社員からの紹介(リファラル採用)は中小企業では特に効果が高く、信頼できる人材が集まりやすい傾向があります。また、これまで対象にしていなかった層——未経験者を育成前提で採用する、シニア層、副業・業務委託、時短勤務希望者など——に求人の枠を広げることも検討の余地があります。

求人内容自体も、賃金だけでなく「働き方の自由度」「キャリアの見通し」「職場の雰囲気」など、応募者が比較検討する軸が増えているので、求人票に書く情報の質を見直すのも効果があります。

どの分野から手をつけるか、もし優先順位をつけて具体的に詰めたい部分があれば、教えてください。

相談結果

妥当な回答をしていると感じるでしょうか、それとも最初の入力だけで適切なアドバイスができるわけがないと思われたでしょうか。

ChatGPTの回答は、迂遠な説明で一般論を語っているといった内容です。

Geminiの回答は、整理はされていますが、相手の状況に鑑みずに教科書的な正論に終始しています。

Claudeの回答は3つの中では最もマシに見えるかもしれませんが、やはり一般論を語っているにすぎません。

生成AIに経営相談をするにあたっては、まず人間側に2つの大きな障害があります。

  1. 自社の課題を客観的に把握できない
  2. 伝えるべきことをすべて適切に言語化できない

生成AI側にも2つの大きな障害があります。

1.入力された情報の過不足を判断できない
2.何でも自分で答えようとする

これらの4つの障害によって、生成AIが経営という解答のないものに対する相談相手が務まらない理由になります。

人間側に起因する要因

第一に、自社のことを当の本人が客観的に把握することはできません。

どうしても経営者の立場、今までの経験によって培われてきた常識というフィルターを外して自社を見ることができないからです。

そのため、客観的に自社の課題を整理し、何を相談すべきかということが妥当でない可能性があります。

第二に、生成AIに伝えるべきことをすべて適切に言語化できるわけではありません。

人間が認識している情報のうち、全てを言語化することは現実的ではありません。
特に、ノンバーバルなものや自分で認識できていないことは、当然言語化できません。

つまり、伝えるべきことをすべて生成AIに伝えることができないということです。

生成AI側に起因する要因

生成AIはあくまでも入力された情報に基づいて出力をします。

しかも、文脈を理解することができないので、その企業や業界特有の、言わなくても伝わる常識といったものも考慮できません。

人間であれば、情報が与えられた時に不足があれば質問をして聞き出す、あいまいな個所は確認するということができます。
また、その場の状況を判断して、聞き方や聞く順番も判断できます。

それに対して、生成AIは不足している情報があれば勝手に一般論で補完してしまいます。

また、生成AI自体がユーザーの質問に対して、具体的に中身のある回答を返すことを正しい行動として学習しています。
そのため、知らないことも嘘をついてでも回答しようとしますし、本来自分よりも妥当な回答ができる存在があれば、紹介をするといったことを自ら行うことができません。

壁当てなら可能

生成AIに回答を求めるような相談相手としては妥当性は低いですが、壁当ての相手としたら価値はあります。

壁当てであれば、主体はあくまでも人間側で、生成AIは人間側の頭を整理するための刺激を与える存在でいられるからです。

特に、自分一人では気づきにくい客観的な視点での対応や、人間相手では躊躇するような突飛なことに対しても、感情を持たないAIは不満を言わずにいくらでも付き合ってくれます。

ただし、壁当てにしても具体的なプロンプトが必要です。

「どう思う?」といったあいまいな聞き方では、「いいですね」といったあまり参考にならない回答しか返ってきません。

また、生成AIの回答も妥当なものばかりではありませんので、自ら精査する必要があります。

最後に

生成AIの性能が上がったら解決できることと、できないことがあります。

特に、プロンプトとして入力した情報に基づいて返答をする以上は、ノンバーバルな相手の反応や対応はAIでは理解できません。

AIに相談する人も増えている昨今、経営に関する相談においては相談の相手として信頼できる水準には達していないということになります。
壁当ての相手として活用するのが良いでしょう。

以上、参考になれば幸いです。

執筆者:
待谷 忠孝(中小企業診断士)

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