
無料で経営相談ができたり、安価に専門家を活用できたりする公的機関のサービスは、中小企業にとって心強い存在です。
自身では整理しきれない様々な経営課題について、外部の視点からサポートしてもらえることは、大きなメリットです。うまく活用すれば、経営改善や事業成長のきっかけにもなります。
一方で、公的機関の窓口相談員や登録専門家にも、さまざまな方がいます。適切な人に相談できれば大きなプラスになりますが、場合によっては、十分な成果につながらないこともあります。
では、公的機関のサービスを利用する際には、どういった点に留意すべきでしょうか。
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経営全体を見ようとしてくれるか
自社の課題が明確でない場合こそ、公的機関の相談窓口が大きな力になってくれます。
経営者・従業員を問わず、日々の業務に追われる中では、どうしても目の前の事象に意識が向きやすくなります。「売上が下がった」「人が辞めた」「資金繰りが苦しい」というのは、あくまでも起こっている事象です。なぜ、それらが発生しているかを特定しないと適切な対策を検討できません。
そのため、相談員に求められるのは企業全体を俯瞰する視点です。ビジネスモデルや外部環境、内部環境、顧客、商品・サービス、収益構造などを踏まえて、事業の仕組みを理解しようとしてくれるかどうかが重要です。
売上が下がったから販促を強化する、人が辞めたから採用手段を提示する、資金繰りが悪いから融資を受ける。これらは一見すると分かりやすい対応ですが、あくまでも対症療法でしかなく、事象の発生原因によっては根本的な解決にはつながりません。
また、ヒアリングの目的が相談者の頭の中を整理することではなく、自分がアドバイスするための材料集めになっている人も、頼りにしにくいでしょう。
原因によって対策は変わる
例えば、前年度から比較して売上高が下がったとします。
売上減少の理由が、Googleの検索のアルゴリズムの変更によって検索順位が低下したというのであれば、検索順位を回復するための対策が有効かもしれません。
しかし、商品のニーズの減少に伴って売上が下がったのであれば、検索順位を上げるだけでは不十分です。短期的には販売促進で一定の売上回復を目指すとしても、中長期的な視点では商品構成や事業ドメインを見直す必要があるかもしれません。
同じ売上減少という事象でも、その原因が違えば、取るべき対策はまったく変わります。
だからこそ、相談員が個別の事象にすぐ反応するのではなく、まず経営状況を把握し、課題を整理しようとしているかどうかが相談員には求められます。
課題が明確だと感じている場合
課題が明確だと感じている場合、最初から特定分野の専門家を活用しようと考えることも多いでしょう。そういった場合でも、先に経営全般について相談をすることをお勧めします。
自身が経営している会社ですから、主観で見ることになります。そのため、課題と考えているものが本当に優先して取り組むべき課題なのかを、第三者の視点で確認することには意味があります。
たとえば、「集客が課題だ」と思って専門家に相談したものの、実際には商品設計や価格設定、既存顧客対応に問題がある場合もありえます。こういった状態で集客だけを強化しても、期待した成果にはつながりにくいでしょう。
そのため、相談内容をそのまま受け取り、経営状況をヒアリングしないで専門家をアテンドする公的機関は、少し注意が必要です。
例えるならば、風邪をひいたと思って病院に行って、「咳が止まらないので薬をください」という患者に対して、診察をしないで咳止めの薬を処方するようなものです。
咳というのはあくまでも症状(事象)であって、原因そのものではありません。風邪なのか、アレルギーなのか、別の病気なのかを診察したうえで、適切な治療を行う必要があります。
相談者の言っていることを無視しろというわけではありません。どのような相談内容であっても、まずは経営全体を把握する必要があるということです。
当座の対策と抜本的な対策を分ける
課題によっては当座の対応と抜本的な対策の両方が必要なものがあります。
たとえばキャッシュフローが悪い場合、現に速やかな資金調達が求められるかもしれません。手元資金が不足しているのであれば、融資や条件変更など、当面の資金繰りを支える対応が必要です。
しかし、融資を受けたからといって、キャッシュフローが悪い原因がなくなるわけではありません。売上の入金が遅いのか、在庫が過剰なのか、借入返済の負担が大きいのか。原因によって取るべき対策が変わります。
したがって、相談員や専門家を見る際には、目先の対応だけでなく、抜本的な改善まで意識しているかどうかも重要なチェックポイントです。
なぜ相談員や専門家によって差が出るのか
人によって能力や知識、経験に差があるというのが、大きな理由の一つです。もう一つの大きな理由として、公的機関によって、相談員や専門家の選択基準、教育体制もまちまちだということが挙げられます。
たとえば、商工会・商工会議所の相談員は基本的に職員であるため、一定の研修や内部での知識共有が行われることが期待されます。
それに対して、登録専門家は個々人の専門性や経験に依存する部分が大きく、共通の教育が十分に行われるとは限りません。また、商工会・商工会議所以外の公的機関でも、相談員の育成に対する考え方や体制には差があります。
また、相談に向き合う姿勢も人によって異なります。専門職として継続的に研鑽している人もいれば、これまでの経験をもとに対応している人もいます。もちろん経験は重要ですが、経営環境は常に変化しています。過去の成功体験だけで対応されると、現在の課題に合わない助言になることもあります。
こうした選定基準や教育体制、知識、経験、相談に向き合う姿勢の違いなどが、相談対応の質に影響しています。
最後に
公的機関は中小企業の強い味方です。
無料または低コストで相談でき、必要に応じて専門家の支援を受けられることは、大きなメリットです。特に、経営課題がまだ整理できていない段階では、第三者の視点を得るだけでも価値があります。
ですが、対応する人には差があります。公的機関を上手く活用するためにもすべてを任せるのではなく、見極めが必要です。
- 目の前の事象だけでなく、経営全体を見ようとしているか
- 相談者の頭の中を整理するヒアリングになっているか
- 当座の対策と抜本的な対策を分けて考えているか
こういった点を参考に、うまく公的機関をご活用ください。
以上、参考になれば幸いです。



