
企業の業績に影響を与える要因は数多く存在します。
その中でも外部の環境変化は、最も影響を与える要因の一つです。経済動向は市場のニーズや規模、競合の動向に大きな影響を与えますが、外部環境を企業がコントロールすることはできません。
一方で、企業がコントロールできる要因の中で最も大きな影響を持つものは、経営者様の意思決定です。
この意思決定の精度はコンセプチュアルスキルに大きく依存します。
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コンセプチュアルスキルとは何か
コンセプチュアルスキルとは、全体最適の判断をするために、物事を抽象化して構造として把握する能力です。それに対して、日々の業務を実行するための能力はオペレーションスキルと呼ばれています。
コンセプチュアルスキルは単一のものではなく、複数の能力によって構成されています。構成要素として代表的なものには以下が挙げられます。
- 抽象化能力…本質を抜き出す力
- 構造化能力…要素と関係を整理する力
- 仮説思考力…答えがない中で見立てを置く力
- 多面的視野…一つの見方に固定されない力
- 論理的思考力…筋道立てて説明・検証する力
なぜコンセプチュアルスキルが経営者にとって重要なのか
経営とは、市場(ニーズ・競合)や経営資源といった複雑かつ多数の要素を統合し、答えのない世界での意思決定を行う必要があります。
コンセプチュアルスキルが高いと、複数の要因を構造として理解し、本質を捉えたうえで経営判断をしやすくなります。
それに対して、コンセプチュアルスキルが低いと、目先のことに囚われ、場当たり的な対応になりがちです。
その結果、事象に対して表面的な対応を繰り返すだけのモグラたたきになり、問題の本質的な解決ができません。
コンセプチュアルスキルの高め方
実際にコンセプチュアルスキルを高めるためには、以下のようなことが例として挙げられます。
- 抽象化する習慣を持つ
- 問題を構造で整理する
- 仮説を立てて検証する
- 複数の視点から考える
- 思考を言語化する
抽象化する習慣を持つ
物事を抽象化するというのは脳にある程度の負担をかけるため、脳は楽をするために事象をそのまま捉えようとします。
では、どのようにすれば抽象化を意識できるのでしょうか。
一つの方法として、目の前の出来事に対して「なぜ?」「つまりどういうこと?」を考えるというものがあります。
例えば、売上が下がったという事象があった場合、その事象をそのまま捉えるのではなく、
- なぜ売上が下がったのか
- それは他の場面でも起きている現象なのか
- 一言で表すとどう表現できるのか
といったように考えます。
このように具体的な事象から共通する構造や原因を取り出すことで、個別の出来事を超えた「概念」として理解できるようになります。
このような思考を意識することで、物事を抽象的なレベルで捉える力が徐々に身についていきます。
問題を構造で整理する
問題とは現状とありたい姿とのギャップです。ギャップが発生している理由が必ずあり、1つのギャップに対して理由が1つとは限りません。また、その理由にもさらに別の理由があります。
このように事象は一つであっても複数の要素が絡み合っています。そのため、問題を捉えるためには、それぞれの要素とその関係を整理する必要があります。
このときによく使われる考え方の一つが、ツリー構造で問題を分解する方法です。
例えば売上が下がっている場合、売上を構成している要素に分解して考えます。売上は「客数 × 客単価」といった形で分解できます。さらに客数も「新規顧客」と「既存顧客」に分けて考えることができます。
このように問題を要素に分解して整理することで、どこに原因があるのかをより明確に捉えることができるようになります。
仮説を立てて検証する
経営に関する問題は、関連するすべての情報を得ることが難しく、また不確実性が高いために最初から正しい答えを得ることは難しいでしょう。そのため、限られた情報から仮説を立てたうえで、検証するという思考の流れが重要になります。
繰り返しますが、関連するすべての情報を得ることが現実的ではない以上、仮説を立てなければ何事も方向性が定まりません。仮説を立てることで、その後の行動が明確になります。
たとえば、売上が下がったという事象に対しての対策を検討するにあたって、売上を上げるための手段はいくらでもあります。ですが、売上が下がった原因に応じた手段を取らなければ、効果は限定的です。
そのため、売上が下がった要因について仮説を立てて、検証し、それが正しいと判断できれば、それに応じた施策を検討することが必要です。
複数の視点から考える
事象を一つの見方だけで判断するよりも、多面的な視点から捉えた方が適切な判断ができることは言うまでもありません。経営には正解というものが存在しないので、なおさらです。
企業経営には複数の利害関係者が存在し、同じ事象でも立場によって意味や受け取り方が異なります。そのため、一面だけを見て良いと思ったことでも、別の見方をすると必ずしも良いとは限りません。
たとえば、増益によって支払う税金が増えそうな場合に、物品を購入して利益を減らすことがありえます。支払う税金を減らすという点ではプラスに見えるかもしれませんが、キャッシュを減らすことになりますし、長期的に見れば企業として成長しているとは言えません。
一つの事象を一方向からだけではなく、異なる立場や切り口から捉え、立体的に理解することで判断の確度が向上します。
思考を言語化する
頭の中で考えているだけでは、思考はあいまいなままになりやすいため、考えていることを言葉にすることが重要になります。
口で説明するにせよ、文字にするにせよ、アウトプットできる程度には明確化できています。逆に言えば、アウトプットできない内は感覚や印象のままでしかないということです。
言語化することで、考えの曖昧さや矛盾、つじつまが合わない点などに気づきやすくなります。また、問題・原因・仮説・結論といった構造に整理することができます。
その結果、整理された情報を他者との共有ができるようになり、実現性が高まります。
最後に
コンセプチュアルスキルを構成する代表的な要素として、抽象化、構造化、仮説思考、多面的視野、思考の言語化の5つを紹介しました。
これらはそれぞれが独立した能力という訳ではなく、経営判断を行うために理解 → 整理 → 推測 → 検討 → 表現という一連のプロセスとして必要な要素です。
コンセプチュアルスキルを構成するこれらの能力は、一朝一夕で身につくものではありませんが、日々意識することで徐々に高めることができます。経営判断の精度を高めるためにも、これらを日常的に意識してみてください。
最後にお勧めの書籍を紹介いたします。
以上、参考になれば幸いです。



