事象か問題か原因か

問題解決には、「事象」「問題」「原因」を区別することが必要です。これらを混同してしまうと、対策が当てずっぽうになり、望んだ結果を得ることができません。

実際には、事象そのものを問題として扱い、対処療法で終わってしまうことがよくあります。 本来であれば、事象を整理して問題の定義を行い、その原因を特定したうえで対応する必要があります。

事象・問題・原因とは何か

改めて「事象」「問題」「原因」について明確にしたいと思います。

事象

事象とは、「売上高が下がった」「問い合わせが増えた」「キャッシュフローが悪い」といったような、実際に起こった(起こっている)出来事です。

問題

問題とは、現状(As is)と理想(To be)とのギャップのことです。

事象そのものに対して、望ましい、望ましくないといった評価をすることがあるかもしれません。しかし、実際には事象単独では評価ができません。 事象の時点ではまだ「現状」であって、望ましい姿との比較をして初めて「問題」が定義されます。

必ずしも、現状が望ましくない状況であるとは限りません。現状も良いですが、さらに良くしたいというギャップも「問題」です。

同じ事象であっても、現状と理想の解釈の仕方によって問題の定義は変わります。

例えば、売上高が10億円、営業利益が5,000万円の会社があったとします。理想を「利益額を上げる」とするか「利益率を上げる」とするかで結果の評価が変わります。

売上高が12億円、営業利益が6,000万円になったとします。理想を「利益額を上げる」と設定していたら達成していますが、「利益率を上げる」と設定していたら達成していません。

原因

ギャップが発生している理由です。1つのギャップに対して原因が複数あることも考えられますし、原因が発生している原因といったように、原因は多層構造になっていることも考えられます。

例えば、「売上高を維持・向上したいのに、下がってしまった」という問題に対しては様々な原因が考えられます。客数が減ったのか、客単価が下がったのか、また客数が減ったとしても、一時的なできごとによるものなのか、市場そのものが縮小しているのかといった原因があります。

問題の原因によって解決策は異なります。売上が下がったから販促だ、営業強化だと安直に考えるのは、当てずっぽうな施策になってしまいます。

原因まで特定する必要がある理由

咳が止まらないひとが病院に行ったとします。医者がやることはなにかというと、咳の原因を特定し、病気を治し、再発しないようにすることです。

咳が止まらないことに対して咳止めの薬を処方するだけといった表面的な対応では真因を取り除けません。仮に咳だけを止めたとしても、咳の原因である病気を治さなければ、再び咳がぶり返したり、違う症状が出るだけです。

「事象」「問題」「原因」を取り違えていたり、不明瞭だったりすると、適切な対策を検討することが難しく、対策したとしても徒労に終わる可能性が高いです。

言い換えると、適切な対策方法が分からない、効果が得られないというのは「事象」「問題」「原因」を取り違えている、あるいは明確になっていない可能性があります。

問題を解決するために必要なこと

問題を解決するには、「事象」「問題」「原因」が明確である必要があります。そのためにはいくつかの注意点があります。

①事象そのものを評価しない

事象自体を良いもの、あるいは悪いものとして評価すると、問題と混同しがちになります。そのため、事象自体の善悪を評価しないようにするのが良いでしょう。

あくまでも事象ではなく、問題を評価します。

②事象に対して理想の状態を想定する

事象を現状とすると、理想の状態を想定することでギャップが明確になります。ギャップが明確になることで問題が定義できます。望ましくない事象が発生したとして、発生前の状態が必ずしも理想とは限りません。事象を多面的に捉えて理想の状態を検討する必要があります。

たとえば、従業員が10名だったのが、ベテラン従業員が1名退職して9名になったとします。採用が難しくなりつつある現状で、必ずしもベテラン従業員と同等のスキルを持った人材を採用するということが現実的に達成可能な理想とはいえません。1名採用するにしても、今いる従業員のスキルアップを図るといったことも考えなくてはいけないはずです。

③原因を広く深く考える

原因を広く多面的に捉えること、原因を深掘りすることの両方が必要です。

主観で捉えると犯人にしやすいものを原因にしがちになりますので、可能な限り客観的に検討するようにしましょう。必要に応じて、なぜなぜ5回などで深掘りすることも有効です。

④クリティカルな原因を特定する

成果を得るために、手をつけやすいものではなく、影響が大きく、かつコントロール可能な原因を特定します。

⑤誰がいつまでに対応するかを決めて実行する

原因を特定したら可能な限り早く対応を行う必要があります。

また、誰がいつまでに何を行うかを決めないと、ずるずると放置することにもつながりかねません。

⑥検証する

原因への対策を行ったら必ず検証をしましょう。問題が解決できたら完了ですし、解決に至らないなら差し戻して検討し直す必要があります。

最後に

問題を解決するには、「事象」「問題」「原因」を区別することが必要です。

事象そのものに反応して対策を検討しても、原因を特定できていなければ、望ましい結果を得ることは難しいでしょう。

経営資源に限りがあるからこそ、問題を定義し、原因を特定し、その原因に対して対応することが重要です。

今一番なんとかしたいことについて、「事象」「問題」「原因」で整理してみてはいかがでしょうか。

以上、参考になれば幸いです。

執筆者:
待谷 忠孝(中小企業診断士)

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