
社外の相手とのメール、社内文書、業務マニュアルなど、ビジネス文章は一定以上のフォーマルな文章が求められます。
しかし、実際のビジネス文章では、文語(書き言葉)と口語(話し言葉)が混ざっているものも少なくありません。
TPOに合っていない言葉遣いのために、信用を失っている可能性もあります。
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ビジネス文章に書き言葉が求められる理由
ビジネス文書が文語(書き言葉)で書かれるべき理由は、単にビジネスマナーの問題ではありません。
以下のような合理的な理由があります。
情報伝達の正確性を担保するため
ビジネスの現場では伝えたいことを正確に伝えることが最優先です。
書き言葉は、主語と述語の対応が明確で、文構造が整理されているため、誤解の余地が少なくなります。
また、助詞(いわゆる「てにをは」)を省略せずに書くため、誰が何をどうしたのかという関係がはっきりします。
それに対して、話し言葉では、以下のように助詞が抜けたり曖昧になったりしがちです。
ビジネスにおける信頼の構築
文体の軽さは、そのまま書き手の印象や信頼性に直結します。
誤解を恐れずに表現するなら、知性や教養に不安を感じさせてしまうこともあります。
それに対して、丁寧で論理的な書き言葉は、「この人はしっかりしている」「信用できる」という印象を与えます。
記録として残す性質に適している
ビジネス文書やメールは、やりとりの証拠や記録、また引き継ぎ資料になることがあります。
そのため、誰が読んでも誤解が無いようにする必要があります。
話し言葉はその場のノリや空気に依存して意味を補完するため、時間が経ったあとに誤解されるリスクが高くなります。
文章に話し言葉が混ざる理由
狙いがあって意図的に話し言葉を使うのであれば良いのですが、意図せず混ざってしまうのは、以下のような理由があります。
頭の中で考えていることをそのまま書いている
自分の脳内で考えているときの言葉は話し言葉でしょう。
それをそのままアウトプットしてしまうといったことが理由の一つとして考えられます。
たとえば、「おそらく〇〇と考えられますが」「〇〇ではなかろうかと存じます」といった言葉遣いではなく、「たぶん〇〇だろうけど」といった感じでものごとを考えているのではないでしょうか。
それをそのまま文章にすると話し言葉になってしまいます。
書き言葉に対する経験不足
学生時代や社会人になったあとも、きちんとした文章を書く経験が乏しい場合、自然と話し言葉がベースになってしまいます。
論文・報告書・新聞・ビジネス文書など、書き言葉で書かれた文章を読む機会が少ない人は、文語の構造に慣れていないため、自分の中に書き言葉のベースとなる文体が存在しないことが考えられます。
周囲の影響
周囲も話し言葉を使っている場合、それが普通だとなっている可能性があります。
また、昨今はSNSに触れる時間も長いと考えられますが、書き言葉よりもフランクな話し言葉が主体です。
日常的に接する文体が話し言葉で、話し言葉と書き言葉との違いを意識する機会がないと、必然的に使い分けることもできません。
話し言葉の問題点
文章には、その人の知性・教養・社会人としての成熟度が現れます。
特にビジネスにおいては、書き言葉で書くべき文章に話し言葉が混ざってしまうと以下のような問題につながります。
信頼感の低下
「なんか」「〜って感じです」「〜ですよね?」などの話し言葉は、軽さ・幼さ・曖昧さといったマイナスのイメージを与えます。
繰り返しますが、文体は書き手の知性や品格を判断する材料になりますので、ビジネスでは特に重要です。
曖昧さが増す
話し言葉は、もともと会話の中で使用されるものであり、言葉のニュアンスや表情、場の空気に依存して意味の補完がなされます。
それに対して、文章は書かれた時点で意味が固定され、また何度でも読み返されることもあるため、より正確かつ明瞭な表現が求められます。
たとえば、「ちょっと困ります」だと、どの程度困るのか、どう対応したら良いのかが読み手には伝わりづらく、意思疎通のズレにつながります。
読み手に負担がかかる
話し言葉は文構造が不明瞭になりやすいため、読み手が意味を補完しながら読む必要があります。
読み手にとって余計な負担となり、誤解や認識のズレからトラブルを招くリスクがあります。
たとえば、「いけそうだったらそのままやってもらって大丈夫です」という文章の場合、以下の点が不明瞭であり、読み手が5W1Hを補完しながら解釈しなければいけません。
- 「いけそう」の基準は何か
- 「そのまま」とは何をどう継続すればいいのか
- 「大丈夫」とは何に対して問題がないのか
ビジネスにおいて非効率であり、誤解によるトラブルの原因にもなります。
書き言葉で文章を書くには
結論から述べると、書き言葉はある程度の型があるので、書き言葉をたくさん読めば自然と身につくでしょう。
たとえば、堅めのビジネス書やビジネス誌の文章は書き言葉で書かれています。
興味のあるテーマであれば、書き言葉の習得だけでなく、知識の補充も同時に進められるため、一石二鳥で効率的です。
また、生成AIに修正をしてもらって比較するというのも、誰でも簡単にできる手段でしょう。
一度書いてみて、生成AIで添削するといった流れなら、無理なく書き言葉で文章を書けるようになるはずです。
最後に
言葉遣いもTPOに合わせて使い分ける必要があります。
社外の相手はもちろん、社内であっても、読み手を意識した丁寧な書き言葉を用いることで、業務の効率化と信頼性の向上につながります。
以上、参考になれば幸いです。



