
どのような企業も、経営を行ううえで様々な課題を抱えています。
課題を一つひとつ達成するごとに企業は前進、成長をしますが、多くの企業は課題を目の前にして足踏みしがちです。
なぜなら、多くの企業が「どのような手段を取ればいいか」ばかりを求めてしまうからです。
中小企業が課題を達成し、成長していくために必要なことは、手段ではなく、経営判断の軸そのものを変えることです。
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現状をどれだけ把握しているか
「売上を上げたい。そのために、どんな手段がよいか?」
このように、すぐに手段を探してしまっては、うまくいきません。
手段の検討よりも、先に現状の把握をする必要があります。
なぜなら、現状とありたい姿とのギャップを埋める手段が必要であり、現状とありたい姿が明確になっていなければ、ギャップも明確でないため、適切な手段を検討できないからです。
さて、現状の把握ができなければ、狙うべきターゲットや、力を入れるべき商品・サービスを決めることができません。
くどいようですが、ターゲットが設定できず、注力すべき商品・サービスも決まっていなければ、売上を上げるための有効な手段を検討することもできません。
何がどれだけ誰に売れているか、顧客層がどういったクラスタに分類できるのか、クラスタごとの購買行動はどうなっているか……どこまで細かく現状を把握する必要があるかはケースバイケースですが、現状把握の粒度が粗くなるほど、その後のプロセスも不明確になります。
だから、現状を把握しないままで検討した手段は、根拠の弱い単なる当てずっぽうになってしまいます。
フレームワークを使用する場合も同じ
フレームワークを使う場合も同様で、現状把握の粒度が粗ければ、フレームワークで検討した結果も精度の低いものになります。
データ分析の世界では「Garbage in, garbage out(ゴミを入れたらゴミが出てくる)」という言葉があります。
精度の低いデータを使っても、精度の低い結果しか得られないという意味です。
現状把握の粒度が粗ければ、どのようなフレームワークを使用しようが、望んだ成果は得られないでしょう。
必要なのは手段ではなく判断の進化
多くの中小企業は、長年の経験・勘・度胸(KKD)によって意思決定を行ってきました。
もちろん、それが間違っているというわけではありません。 事実、それで成長してきた企業も少なくないでしょう。
しかし、変化のスピードが加速する現代において、KKDだけでは限界があります。
いま必要なのは、経験・勘・度胸による感覚的な経営判断から、データドリブンな(データを根拠にした)意思決定へとシフトすることです。
これは単なる手段の導入ではなく、判断のプロセスの進化です。
先ほどの売上で言えば、どのような情報が分かれば売上を上げることができるかを検討の上、顧客データや販売データなどを分析し、現状をより正確に把握することで適切な戦略立案と適切な手段の検討ができるようになります。
なぜデータドリブンが重要なのか?
なぜ感覚的な判断からデータドリブンな経営判断、意思決定にシフトすべきなのでしょうか。
その理由を説明します。
1.人間の感覚は、時代の変化に追いつかないから
AIを含めたITの進化に見られるように、企業を取り巻く環境変化のスピードはこれまで以上に速くなっています。
そのため、過去の成功パターンが、今では何の意味も持たなくなっていることも少なくありません。
また、世の中のありとあらゆる変化を捉えることはできません。
そのため、勘や経験だけに頼っていると、変化の兆しを見逃し、誤った判断に気づけないこともありえます。
2.意思決定の精度と再現性が高まるから
中小企業は、大企業に比べてリソースが限られています。
だからこそ、効果的なリソースの活用が求められます。
他社を参考に試した結果、理由は分からないが上手くいったというようなことでは、再現もできません。
データという客観的な判断材料に基づけば、判断の精度が高まるだけでなく、判断の過程も分かるようになるため、組織内での共有や再現が容易になります。
3.属人化を防ぐ
「経験」とは属人的なものであり、言語化できない暗黙知の最たるものだと言えるのではないでしょうか。
また、「勘」とは経験に基づいてロジックを飛ばして解答を導き出すことだと定義づけられるでしょう。
必然的に、他者が再現することは難しいものになります。
対して、データを使った意思決定であれば、属人化した暗黙知への依存度は低下し、再現しやすい意思決定がしやすくなります。
最後に
意思決定の根拠を、あいまいな感覚から明確なファクトに基づくものへと変える。
それができるようになることで、中小企業は偶然の成功から、必然の成長へと進むことができるのではないでしょうか。
以上、参考になれば幸いです。