「100億円宣言」から読み解くこれからの中小企業

経済産業省や中小企業庁は売上高100億以上の企業を、より輩出しようという動きになっています。

参考:100億企業成長ポータル

理由としては、地域の中小企業が売上高100億円といった中堅規模の企業に成長する際に、高いレベルで外需獲得、地域の経済の牽引、賃上げに貢献しているという実態があります。

参考:中小企業庁『中小企業の成長経営の実現に向けた研究会(第1回) 配布資料』

ちなみに、2023年度決算(2023年4月期~2024年3月期、単体)時に、売上高が100億を超える企業は国内の企業全体の1%強とのことです。

参考:帝国データバンク『「100億企業」の実態調査(2025年)』

経済産業省や中小企業庁の考えは妥当性が高いと思われます。
しかし、売上が10億円に満たない企業、つまりほとんどの中小企業は売上が上がれば良いとは思っていても、何倍、何十倍まで拡大するといったビジョンは見えないのではないでしょうか。

売上高=レバレッジ

経済産業省や中小企業庁が期待している通り、売上規模が大きくなるほど経営資源も増えるため、選択肢が増えます。 また、スケールメリットを生かしてレバレッジが利きやすくなります。

さらに、シェア上位に食い込むと、競合がより具体的になるため、とるべき戦略も明確になります。
その結果、成長の道筋も見えやすくなるでしょうし、何よりも競争相手が明確な分、成長しようという意思も強くなるのではないでしょうか。

当然、売上規模が小さい企業の場合は全くの逆です。
売上を伸ばしたいという気持ちは多くの経営者に共通するものの、どこまで売上高を伸ばしたいかというのも、現状の枠の中で考えたものになっているのではないでしょうか。

結論を述べると、多くの中小企業にとっては、どうしても現状の延長線上で物事を考えてしまい、成長の意欲も強くなりにくいといえるでしょう。

たとえば売上高が5億円ぐらいの企業だとしたら、自分たちの企業規模は売上高5億円ぐらいであって、売上高10億円、15億円になるイメージを持ちづらいことが理由です。

経済産業省の施策

我が国の中小企業事業者(個人事業含む)は営利法人と個人事業主を含めた全体の99.7%を占め、雇用の7割を生み出し、付加価値の半分を生み出しています。

そのため、国としては中小企業こそが経済活動の主役だと考えています。

とはいうものの、成長加速化補助金のように、経済的効果が期待できる成長を見込める企業への支援に重点が置かれるようになるでしょう。

参考:中小企業基盤整備機構『中小企業成長加速化補助金のご案内』

これまでの補助金の多くは成長のための投資目的というよりも、老朽化した設備の更新目的で使われたり、補助金の代書業者が、自社の利益を優先して相手企業の状況を度外視した申請を行うケースが多かったことも、その一因だと考えられます。

今後は何を目指すか

業種や業態によっては拡大が難しいものもありますので、全ての企業が売上高100億円を目指す必要もないでしょう。

実際に、経済産業省や中小企業庁の掲げる売上高100億円というのも、象徴的で分かりやすい目標設定であり、キリの良さも含めて設定された数字だと考えられます。

しかし、より成長を目指してほしいと考えており、全ての事業者にとってそれが必要だということは間違いないでしょう。

経済産業省や中小企業庁が、中小企業に対して成長を促す背景には、国内人口の減少、少子高齢化といった企業の経営の根幹に関わる環境の変化があります。

環境が大きく変わる(基本的には企業にとって望ましくない変化)中で、現状維持はできないため、環境に合わせて適応しなくてはいけないという前提を全事業者に理解してほしいという考えもあるのかもしれません。

「そんなこと言っても、今までこれでやってきた」と考える企業を、経済産業省や中小企業庁も否定はしていません。

しかし、限られた予算を投資するなら、積極的に成長したい企業が対象になるのは当然のことではないでしょうか

つまり、企業の規模に限らず、現在の延長線上ではない未来を目指すことが求められると言えます。

最後に

現在の企業の在り方、業務のやり方を続けていても、大きな飛躍は難しいでしょう。

また、国もただ成長しろと言っているだけではありません。

総務省は、統計局によるデータの整備や公開に加え、企業がデータを活用できるよう、利活用の環境整備に取り組んでいます。

経済産業省もまた、DXの定義にデータの活用を加えました。
これは、総務省のオープンデータの活用推進施策の影響もあるのかもしれません。

厚生労働省は、データ活用、IT人材に限りませんが、従業員の方々のためのリスキリング・リカレントのための助成を強化しています。

売上規模の大きな企業は、こうした流れを捉えて動き出しています。
改めて、こうした国の動きを捉え、今後の大きな成長を図る方向に舵を切ることが、今後の中小企業に求められているのではないでしょうか。

以上、参考になれば幸いです。

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