後発は不利

起業、あるいは新規の事業によって新たに市場参入するというのは、基本的に不利な状況におかれることを避けられません。
すでに市場には先行している競合が存在しており、知名度や信頼度、実績といった顧客から選ばれる諸々の要素において、競合に対して劣位の状態からスタートすることになるからです。

では、新規に市場参入する場合にはどのように対応すればよいのでしょうか。

後発が不利な典型例

後発が不利な業種の典型が、士業やシステム会社、デザイン関係といった無店舗型のサービス業です。

サービスには形がないため、試してみることも難しく、買い手は実績を選択の基準にする可能性が高いです。
つまり、後発は先行している競合と比較して、実績が少ない訳ですから選ばれにくいということになります。

さらに、提供するサービス内容で差別化ができないのであれば、なおさら不利です。
そのため、新規参入するにあたっては、先行している競合とは差別化する、あるいは先行している競合に対して何らかの優位性を持つ必要があります。

コンビニエンスストアが典型例と言えますが、店舗型の事業であれば、買い手にとって利便性の高い位置に出店することで、新規参入者も競合に対して優位性を得ることができるかもしれません。
しかし、無店舗型の事業であれば場所の優位性というのを得ることはできず、実績と提供する付加価値の内容を武器に戦わなくてはいけません。

新規参入者がとるべきではない対策

簡単にできるような表面的な対策では、競合に対する優位性を得るということは難しいと言えます。
なぜなら、競合も簡単に模倣できるため、一時的にはうまくいったとしても優位性を維持するのが難しいということが理由として挙げられます。

表面的な対策とは、例えば以下のようなものです。

価格を下げる

新規事業者が自社の商品・サービスを買っていただくための対策として、価格を下げるというのが誰もが思いつくことではないでしょうか。

しかし、低い価格で事業を始めてしまったら、なかなか価格を上げることはできません。
また、規模が大きい企業の方が価格を下げることに関しては有利ですので、規模の小さな新規参入者がすべきことではありません。

広告宣伝に力を入れる

他には、宣伝広告を活用して知名度を上げるということが考えられます。

広告宣伝自体は必要なものですが、広告宣伝だけで不利をカバーするのは有効な策とは言いづらいでしょう。
なぜなら、これもまた宣伝広告のための費用をねん出できる規模の大きい企業の方が有利になるからです。

また、提供する価値が競合のものと差がなければ、価格を上げる訳にもいかないため、宣伝広告費の分だけ利益率は下がることになります。

新規参入者が検討すべき事項

実績がなくても、それを覆せる優位性があれば、つまり付加価値を提供できれば検討してもらえる可能性があります。

付加価値には、主として提供するものと、副次的なものの2種類があります。
理想を言えば主とする価値で優位性を持ちたいですが、業種・業態によってはそれが難しい場合があります。
その場合は副次的な価値で優位性を得ることが求められます。

主として提供するものでの優位性

競合よりも高い付加価値というのが分かりやすいでしょう。

何も全ての買い手に対して高い付加価値を提供しなくても構いません。
むしろ、経営資源が限定される中小企業であれば、ターゲットを限定し、特定のターゲットに対して高い付加価値を提供する方が効果が高いと考えられます。

副次的な価値での優位性

問い扱い商品・サービスで差別化しづらい事業者は多々あります。
保険代理店や不動産業者といったように、他者の製品を代理で販売する事業者は、取扱商品の差別化は難しい業種です。

一例ですが、保険代理店であれば顧客向けに様々な情報を提供するといったことが考えられます。
提供する情報は保険に関連することだけではありません。

個人向けであれば金融関連情報、終活についての情報提供といったことが思いつくでしょう。
また、保険に関することでなくても、お勧めの本や映画、お勧めのスマホアプリといった、顧客が喜ぶことであればどのような情報提供でも付加価値となるでしょう。
ビジネス誌に飲食店や旅行の記事が載っているようなものをイメージしていただくと分かりやすいかと思われます。

企業向けであれば、経営に関するセミナーや情報提供、様々な事業者向けのサービスを提供している企業と提携し、保険の加入事業者はディスカウントしてサービスを受けられるといったことが思いつきます。
クレジットカードの付帯特典のようなイメージです。

例えば、不動産業者であれば、布団のレンタル業者、家具・家電のレンタル業者と提携して、契約してもらえれば顧客に業者を斡旋するといったことが考えられます。
単身赴任などの理由で期間が限定された入居者であれば、余計な手間やコストが省けるために、自社で契約していただける確率が上がるはずです。

しかも、提携業者が全てやってくれる訳ですから、自社はコストもかけず、チラシを渡す手間だけです(ここで提携業者から紹介料のマージンを取ろうとすると、提携先の旨味がなくなるので、アライアンス自体が締結しないでしょう)。

最後に

後発の不利な点を挙げてきましたが、すでに市場があって、ニーズも競合もある程度わかっているというのが、後発のメリットです。

先行している競合と差別化することで、「他所ではなくて、御社にお願いしたい」と思っていただける要素を作って、後発の不利を覆す必要があります。
さもなければ、不利な戦いをずっと強いられることになってしまいます。