中小企業の経営とSDGsについて改めて考える

SDGsという単語も浸透し、丸いバッジをつけている人もちょこちょこ見かけます。
しかし、なんとなく良いものという漠然としたイメージではなく、企業の経営においてSDGsがどういったメリットをもたらすのかということを明確にイメージできるでしょうか?

SDGsでは17の目標が設定されていますが、個々の目標だけを見れば、概ね達成できれば良いという考えの方が多いのでしょう。
しかし、企業がSDGsを経営に取り入れることに対してメリットがなければ、ただの足かせになってしまいます。

さて、中小企業白書では中小企業が抱える課題がテーマとして取り上げられています。

  • 2019年度版の主なテーマは「人手不足」「事業承継」
  • 2020年度版の主なテーマは「労働生産性」
  • 2021年度版の主なテーマは「感染症の影響」「DX」「事業承継」

となっており、これら中小企業の経営課題においてにおいて、SDGsがどういった影響を与えるのかを改めて考察してみたいと思います。

人手不足

人材不足の原因は少子化と高齢化です。
もちろん、SDGsはこれらの根本的解決には影響を与えません。

では、求職者側から見た際にはSDGsに取り組む企業はどう映るでしょうか?

  • SDGsに取り組んでいる、条件面に難のある企業
  • 特にSDGsに取り組んでいない、条件面に不満のない企業

以上の2つの会社があるとしたら、当然ですが求職者は後者を希望するでしょう。
SDGsが給与面、年間休日の日数、残業時間といった諸条件を差し置いて、一番の条件となることは考えにくいです。

他社と条件が同等の企業であれば、SDGsに取り組んでいるということで求職者から選ばれる要素にはなり得るでしょう。
しかし、条件面が求職者の希望水準に達することが最重要なのは言うまでもありません。

事業承継

中小企業の経営者年齢は、1995年のピークが47歳であったのに対し、2015年ではピークが66歳となっており、経営者年齢の高齢化が進んでいることが分かります。
経営者年齢の高齢化を背景に、70代や80代以上の経営者年齢の割合が高くなっています。

後継者不足によって事業承継ができず、休廃業・解散をする企業が増えているということが現状ですが、SDGsに取り組んだからといって、どこから後継者がやってくる訳ではありません。
そもそも、全然知らない人が会社を継ぎたいと言ってきたところで、承継させようと考えないでしょうが……。

M&Aに関しては多少なりとも有利に働くことも考えられます。
ただし、買い手がどれだけ評価するかは未知数ですし、SDGsに取り組んでいる年月が短いと影響は小さいかもしれません。

労働生産性

我が国の労働生産性が低いというのはご存知のことかと思われます。
OECD加盟国36か国中21位と、OECD平均を下回り、首位のアイルランドの半分程度の水準となっています。
労働生産性が低い原因は様々ですが、SDGsが労働生産性の向上に寄与するでしょうか。

SDGsを取り入れているという理由で、発注元が単価をアップしてくれるか……、これは考える間もなくありえませんね。
発注単価をアップするということは、発注元自身の利益を減らすことになりますので、あえてSDGsへの取り組みを理由に自社の利益を減らすようなことは考えられません。

同様に、SDGsを取り入れているという理由で、より高い価格設定ができるか……これも考えにくいです。
システムを導入するとして、A社の見積が1,000万円、SDGsに取り組むB社の見積が1,100万円だったら、果たしてB社を選ぶでしょうか?

他の条件……例えば、A社はアフターフォローが弱く、B社はアフターフォローも丁寧であるといったことなら、B社を選ぶこともあるかもしれません。
だとしたら、SDGsよりもアフターフォローの方が選定における訴求力が高いということになります。

ただし、品質に差がなく、価格も同等であれば、SDGsを取り入れていることが選定の(弱い)理由になるかもしれません。
しかし、結局提供する付加価値において差別化することができていない状態を改善し、競合と差別化を図ることがSDGsよりも優先すべきことでしょう。

以上、SDGsが中小企業の労働生産性に寄与することは難しそうです。

感染症の影響・DX

さすがに関係はないと考えられます。

最後に

Googleの検索フォームに「SDGs」と入力するとサジェスト(併せてよく検索されるワード)として「批判」「違和感」というワードが出てきますが、ポジティブなイメージ、ネガティブなイメージの両方を抱かれていることは間違いないようです。
SDGsに対して批判的な考えや違和感を覚える方は、SDGsに取り組みさえすれば万事OKといったような論調に対する批判や違和感なのかもしれません。

実際に、SDGsに取り組むことでプラスの影響を受けることは十分にありえますが、競合との差別化、優位性を得られるという論調には疑問符がつきます。
なぜなら、競合もSDGsを取り入れることでアドバンテージがなくなるからです。

いずれにしても、中小企業の問題解決(課題達成)の最優先、最有力な手段とはなりにくいので、SDGsに取り組むこと自体が目的になっては意味がありません。
企業としてのあり方の一つとして、従業員の方の意識の方向付けの一つとして取り組むといった取り入れ方なら有用性はあると考えられます。