データドリブンな経営

中小企業の経営判断はKKD(経験・勘・度胸)になりがちです。
経営環境が変わらなければKKDでも良いのかもしれませんが、経営環境の変化の激しい時代や変化のスピードの速い時代には適切ではありません。

そのため、経営判断の確度を上げるためにも、データドリブンによる意思決定をする必要があります。

中小企業の経営判断がなぜKKDなのか

戦後の復興、高度経済成長といった需要が急拡大した時代では、供給が需要に追い付いていないため、作れば売れた時代でした。
特に、大企業のサプライチェーンに組み込まれた企業においては、市場の拡大と共に受注も増え、その結果として成長できていたため、現場の改善に主眼が置かれ、経営的な判断は後回しになっていました。

また、規模が小さく、家族経営でスタートした企業の場合は、経営環境に敏感に反応するよりも、既存顧客との信頼関係の維持・向上が重要だったことも理由として考えられるでしょう。

経営のスピードは上がっている

10年、20年前と比較して、経営のスピードは大幅に上がっています。
その背景には以下のようなものが挙げられます。

  • インターネットの普及・発展(1990年代後半~)
  • スマートフォンやタブレットの普及(2010年代~)
  • リモート会議の普及(2020年~)

そして、現在はAIの普及・発展が急速に進んでいます。

これらIT技術の発展により、情報の入手やコミュニケーションのスピードの向上、場所を問わないインターネットの活用、会議や打ち合わせに物理的な移動時間が不要になりました。

こういった理由により、情報収集やコミュニケーションの時間に必要な時間が短縮された分、意思決定を素早く行わなくてはいけないようになりました。

データドリブンの重要性

経営のスピードが上がる中、有効な手段としてデータドリブンな経営判断が求められます。

経営環境が大きく変わる中で過去の経験がどこまで役に立つのか不明瞭です。
そもそも、過去の成功体験を繰り返していって成功するのであれば、全ての企業が右肩上がりの業績になっているはずです。

また、勘を当て続けるというのは現実的ではありません。

経営者として、大きな経営判断をするには度胸は必要です。
しかし、それはあくまでも判断の時点の話で、判断のための材料を何とするのかというのは別の話です。

特に中小企業にとって、限られたリソースの中で最大の効果を発揮するために、データを基にした意思決定が不可欠です。

データドリブン経営とは

データドリブン経営とは、収集された定量的・定性的なデータに基づいて意思決定を行うアプローチです。
これにより、より客観的で確度の高い意思決定が可能となります。

データというと改めてアンケートを取る、ビッグデータを解析するといったイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、すでに企業内に多くのデータが存在しています。

必要に応じて新たに調査を行ってデータを収集する必要もあるでしょうが、すでに存在しているデータを活用するだけでもKKDからの転換は可能です。

データドリブンに活用できるデータ

中小企業もデータドリブンな経営をする上で、活用できるデータをすでに保持しています。
また、社外のデータでもすぐに活用できるものがあります。

コストをかけて新たにデータを取得する前に、まずはそれらを活用していきましょう。

財務情報

決算書に経営のすべてが現れる訳ではありませんが、決算書を見ることで明確にわかることもたくさんあります。

売上向上、コストダウン、キャッシュフローの改善といったことは一般的に経営目標として設定されることですが、達成のために目に付いたことからコストカットする、だけでは効果は薄いでしょう。

なぜなら、現在何にどれだけコストがかかっていて、何をいくらコストを下げる必要があるのか分からないので、具体的な手段を検討しようがありません。
また、何をどれだけコストカットできたのかの判断もできません。

財務情報に基づいて現状を把握し、目標を設定することでギャップが明確になるだけでなく、進捗も確認できるようになります。
つまり、適切にPDCAサイクルを回すことができるようになるため、その結果として目標達成の確度が向上します。

顧客情報

事業内容によってどのような顧客の情報を所有しているのかは異なりますが、顧客の情報から示唆が得られることに関しては共通しています。

どういった特徴を持った顧客が多いか、どういった属性の顧客がいるのか、客単価が多いのはどういったセグメントかといったことを分析することで、売上の向上につながります。

例えば、顧客全体をセグメントすると購買の多いセグメント、購買の少ないセグメントに分かれると思われます。
そこで、自社が強いセグメントを伸ばしていくのか、弱いところを伸ばしていくのかといった経営判断をすることができるようになります。

データを活用することで、売上を上げるためにとにかく頑張るではなく、実態に基づいた判断ができるようになります。

オープンデータ

今後はどういったニーズが増えることが見込まれるのか、市場はどのように変化しているのかといったことを推測し、競合よりも先んじて動いていきたいところです。 様々な機関が調べて無料で公開しているオープンデータは環境の変化を推測する材料になります。

オープンデータに関しては過去の記事『オープンデータ活用のすゝめ』をご参照ください。

最後に

経験や勘が必ずしも悪いとは限りませんが、どこまでいっても感覚でなんとなくであることには変わりありません。
中小企業にとって限られた経営資源を効率よく活用し、成長をしていくために、データを活用することによって明確に現状を把握し、確度の高い経営判断ができるようにデータドリブンな経営にシフトしていくことをお勧めいたします。

以上、参考になれば幸いです。

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