なぜ手段から考えるのか

全ての企業は大なり小なり、問題を抱えています。
問題を解決するために、解決の手段を最初に考えると、ほぼ失敗します。
問題解決において最初にすべきことは、解決のための手段を考えることではなく、現状とありたい姿の明確化です。

最初に手段を検討し、実行して、実際に望ましい成果を得るに至った割合は高くないと経験しているにも関わらず、なぜ最初に手段を検討するのでしょうか。

最初に手段を考えがち

売上を上げたいと思い、SNSをもっと活用したほうが良いのかなと考えるのはよくある話ではないでしょうか。
しかし、SNSであれ、その他のことであれ、全ては目標を達成するための手段です。

現状とありたい姿とのギャップが明確でなければ、妥当な手段は検討できません。
そして、ギャップが明確なのは、現状とありたい姿の両方が明確だからです。

現状、ありたい姿、そしてそれらのギャップが明確にせず、最初の手段を検討するとただの当てずっぽうにしかなりません。
だから望ましい成果を得ることができないのです。

なぜ手段から考えるのか

当てずっぽうを当て続けることができるかと言われると、肯定する人はいないと思われます。
しかし、なぜ当てずっぽうで手段から考えるのでしょうか。
それには、いくつかの理由が考えられます。

具体的なことを考える方が楽だから

ありたい姿を明確にするには抽象的な思考が必要ですが、それに対して手段は比較的具体的であり、思考の負担がより小さいです。
そのため、手段を考える方が心理的な負担が少なく感じられるということが理由の一つとして考えられます。

抽象的思考は複数の要素を統合する作業です。
横関係として並列にある要素、縦関係にある要素、過去・現在・未来といった時間的な要素といった様々な要素を統合することになります。

不確実性への警戒心

問題に対して何らかの対策を講じた結果は不確実な話です。

人間は進化の過程において、不確実なことに対して本能的に不安を感じるようになりました。
不確実性は生存に対するリスクにもつながるためです。

現在においては不確実性は物理的な危険に直結するとは限りませんが、やはり不確実性の高い物事に対して脳はストレス反応を引き起こします。

特に抽象的な領域での思考は、ゴール自体が不明瞭である、回答が一つではない、あるいは解答そのものがないといった不確実なものを思考するため、心理的な負担やストレスが伴います。

そのため、脳は具体的なことではない領域での思考を忌避しがちであると考えられます。

意識やスキルの問題

慣れてしまえば、無意識に抽象度を変えて考えることができるようになりますが、それまでは意識的に抽象度を上げて処理し、再度具体化するといったプロセスを意識する必要があります。

具体的な手段を直接検討しているうちに、自然とできるようになるというものではないのだと考えられるため、意識しないと思考の抽象度を変えることができず、またスキルも身につきません。

様々なフレームワークも抽象度を上げて状況を整理したり、検討したりといったことにおいて有効なツールになりますが、ツールを使用するにもスキルが必要です。

現状とありたい姿、ギャップを明確にする

手段を検討するには現状とありたい姿のギャップを明確にし、そのギャップを把握することが必要です。 以下の手順で検討されてはいかがでしょうか。

①現状を明確にする

現状が不明確であれば、ありたい姿も妥当性を欠きます。 そのため、まず現状を明確にしたいところです。

現状は必要に応じて定量面と定性面それぞれを明確にする必要があります。

顧客満足度やブランドイメージといった定性的な項目は、何らかの形で具体化、見える化、可能な限り定量化が必要です。

②ありたい姿を明確にする

現状に基づいてありたい姿を明確にします。
どのような姿を設定しても自由ですが、現実に基づかない到底達成できないような姿だと、目標設定の意味がありません。

こちらも可能な限り定量的なものが望ましいですが、定性的なものが駄目なわけではありません。
定性的な姿であれば、何らかの形で達成度が判別できるようにしましょう。

③ギャップを明確にする

現状とありたい姿を明確にしたら、それらの間のギャップを明確にします。

④ギャップを埋める手段を検討する

最後に手段を検討します。

手段を検討したら、いつ、誰が、何を、どのように行うのか、計画を立てましょう。 その後は、PDCAサイクルを回しながらありたい姿を目指します。

最後に

問題解決の第一歩は、手段ではなく「現状」と「ありたい姿」を明確にすることです。
このパターンを押さえることで、より適切な手段の検討ができるようになるでしょう。

手間がと思われるかもしれませんが、このプロセスこそが問題解決を成功に導く鍵です。

以上、参考になれば幸いです。

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